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№1290 赤ちゃん取り違え事件

№1290 赤ちゃん取り違え事件

 東京都墨田区の病院で60年前、出生直後に別の新生児と取り違えられた都内の男性(60)が人生を狂わされたとして、東京地裁は26日、病院側の過失を認め約3800万円の支払いを命じた。

 この事件、法律家の側からすれば、子供の知る権利、親子間の平和、さらには相続問題も関連しているため、事態はとても複雑だ。

 法律の原則からすれば、日本は血縁主義をとっていて、血のつながったものを親子としている。しかし、他人の子供、例えば姉の子供を実の子として戸籍上届けるというようなことは実はそんなにめずらしくない。

 私達はこうした養子のことを「藁の上の養子」と呼んでいる。大昔、ワラの上でお産して、お産直後に養子にして、実の子供として公表するということが行われたことから、ワラがまだある状態での養子という意味で「藁の上の養子」、と呼んでいる。

 今では特別養子縁組制度というのがあって、養子でありながら実の子供として届け出ることが可能となっている。これは生まれた子供が私生児として扱われることで社会的に差別を受けたり、親が本当の子供として育てたいという要求がることから設けられた制度だ。

 特別養子縁組制度は、産みの親より育ての親、子供は真実を知らない方が幸せだという考えに基づいている。

 本当にそうだろうか。
 
  私は過去にいくつか親子関係をめぐる事件を取り扱った。戸籍上は親子でも実態は養子だった事件、実の子供が不倫相手の子供かも知れないと悩む事件、不倫相手との間で生まれた子供を父親不明で戸籍に載せなければならなかった事件、花街のおきてとして父親を知らせないという事件などいろいろだ。

 わたしはいろいろ悩んだが、結局、どんなことがあったとしても本当のことを知った方が幸せだという立場に立つことにした。人は自分が何ものであるかをきちんと知ることで個人として確立するように思う。