№1282 根雪のような借金
運転資金として借りた短期融資を長期融資の返済に回しているとだんだん借金がたまってくる。借金で借金を返済するのだから当たり前だ。会計がいいかげんで、その場をしのぎの経営を続けると借金は根雪のようにたまっていく。
もちろん、ものは考えようで、銀行はよく貸してくれた、むしろ、私達に投資してくれたと考えることもできる。自分の会社に投資してくれた人に対して何らかの投資の還元は必要だと割り切ることはできる。
そうは言っても、借入が売上ぐらいにまで増えてしまったらもうたいへんだ。1億5000万円の売上に対して1億円を越える借金があったら、おそらく社長は何のために働いているか分からないだろう。自分の取り分も20万円ぐらいになっていて、ひょうとしたらマクドナルドで働いた方が得だという気持ちになっているかもしれない。
こうした借金はどこかでけりを付けなければならない。根雪のようにたまった借金に対して長年にわたって返済してきたというのはそれだけの利益があったと言うことができる。この利益をあげてきた部分だけ何とか切り離して会社は生き残れないだろうか。
サービス業や小売業系のように起業にそれほど資本のかからない業態の場合、新しい事業を起こしてそこに顧客を移すことで切り抜けられる可能性がある。古い会社について破産するか借金を放置するかして借金を経営者の墓場に持っていってもらうという方法がある。それは事業譲渡だったり、会社分割だったりする。
製造業の場合は工場や機械が必要なので簡単ではない。
この時に注意するべきは、会計の透明性と対価の提供という考え方だ。「極」小さな企業であればなし崩し的に事業を承継させることはできる。しかし、そこそこの規模、少なくとも1億円を超える売上があるような会社は移転のプロセスの正当性を常に確保することを心がける必要がある。専門家ときちんと相談してロードマップを作成し、順序よく事業を承継させていく。