№1278 関係の中で生まれるイノベーション
昨日、中小企業家同友会経営フォーラムがあった。これは年に1度の大行事で1000人を越える事業者が集まって勉強会を開催する。私は地域貢献をテーマにした分科会に参加した。
清水食品は愛知県東部海部地方にある、カット野菜を主力商品にした会社だ。カット野菜は競争が激しい上、気候変動に相場が左右されるために価格が安定しない。そこで、同社は特異分野を作りあげ、競争しない戦略を選択した。注目したのはレンコンだ。
レンコンはこの地域の特産で、行けば分かるが一面にレンコン畑が広がり、春には蓮の花が一面に咲くことで有名だ。レンコンはニッチな野菜であることから、清水食品もレンコン加工に会社の将来を託している。
そのためにレンコンの加工専用工場を作った。社長が音頭をとって会社でレンコンの裁判を始めた。レンコンを加工して次から次へと新商品を作り道の駅などで販売を始めた。レンコン栽培を市民に開放し、収穫期には多くの市民が集まった。レンコンに特化した行動はメディアも注目するようになり徐々に売り出されている。
社長はまだまだだというが、会社が選択したレンコン戦略はうまく言っているように見える。レンコンのきっかけに道の駅の関係者、役所関係者、飲食店チェーンなどいろいろとつながりが増え、その中でもアイディアが生まれている。
株式会社CHERRY SOTONEは主婦が始めた会社だ。日本酒が好きなところから日本を売り出す会社を38才で創業した。自らの商品を日本酒文化「WAの文化」と位置づけている。
「売り出す会社」と言ったのは、人と人、人と企業、企業と企業を「日本酒文化」の発展という目的で結びつけイベントなどを繰り返していく。その過程で多様な日本酒を売り出していこうというだ。
「WAの文化」の「WA」にあえて和を当てなかったのは、日本酒文化を「守る」だけでなく、積極的に創造していこうという意気込みを表しているのだろう。
この会社は社長の「文化運動」に共鳴する人たちが集めようとしている点だ。日本酒を楽しむことをきっかけにできあがる「関係」を発展させることによって、その結果として多様な日本酒の販売を促進していくという戦略だ。会社の志の高さが「売り」となっている。
新しい企業、新しい事業の結びつきが新しいものを生むとは昔から言われていることだ。特に中小企業の場合、高技術ではあっても単体では役立たなかったり小さかったりする。企業同士の連携は必要なことだ。
関係を作る、連係を作るとは言うは安い。2つの会社の特徴は「文化運動」のリーダーとして人々を惹きつけ、関係をマネジメントし、さらに発展させようとしている点だ。関係と創造のテーマは非常に重要なテーマだ。
分科会ではもう一つ株式会社中西というリサイクル業の報告があった。これはこれで障害者の可能性を引き出すというテーマの報告があり興味深いものであった。