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№1263 企業の持続性と社会貢献

№1263 企業の持続性と社会貢献
 企業は社会に支持されて初めて成り立つ。企業が持続的であるというのは社会に支持され続けるということを意味する。企業の目的は社会の支持を得続けることにある。

 ドラッカーは「企業の目的として妥当な中身はただひとつ、『顧客を生み出すこと』である。」と述べている。企業が社会や市場から支持されるということは、顧客を持つことであり、企業が拡大するということは顧客が拡大するということに他ならない。

 この「顧客を生み出す」ということについて「市場の風向きにうまく順応する」というのでは不十分だという.。企業が顧客を生み出すためには、自ら市場にかかわり、自らが市場を動かすことをしなければならないというのだ。

 一つの企業が顧客を持ち続けるということは、顧客が企業の提案に応じて動いていくということになる。企業が市場を持ったということは、支持する顧客が現れたということであり、お客は企業との間で新しい関係を作りあげたということになる。この関係こそが、企業が市場を開拓したということの意味であり、企業が市場を動かしたということになる。

 企業に生産と創造が欠かせないのはある意味当然のことだ。
 つまり、顧客を作りあげていく過程には顧客との間に新しい関係を作りあげていくという意味がある。その新しさにイノベーションが含まれている。一つのアイディアはそれだけでは市場の開拓につながらない。製造、仕入、輸送、販売、営業と多くの経営資源の統合と結びついて解決となっていく。

 これらの「解決」は結局のところ人が行う。よい人材を確保し、戦略的に組織化され顧客に向けて活動していく。企業の社会貢献はこうした企業の「人」が顧客を創造し、社会との相互作用で社会を変えていく過程に存在するのだということだろう。

 こうしてみると、企業の目的を「利益」にあげることは危険なことになる。企業は人を目的に運営されなければならない。企業が持続的に発展するとは顧客、社員、そのた企業に関わる人が持続的に発展することに他ならない。

 ドラッカーは「利益の最大化」を目的ととらえることは不適切であるという。収益性の神聖視という誤解を生むという。人より利益という発想は多くの誤解を生むばかりか反感を買うことになるだろう。あるいは、人より利益という発想が思わぬところで企業の持続性を破壊するかもしれない。

 もちろん、利益は企業にとって重要な指標だ。利益無くして企業の持続はあり得ないし、社会貢献もあり得ない。ドラッカーはこの難しい課題について多くのことを伝えている。

  ※ ドラッカーの引用は「マネジメントⅠ」(日経BP社)から行いました。