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№1254 実践の組織力(bodys of practice)

№1254 実践の組織力(bodys of practice)
 オープンイノベーション英治出版)を少しずつ読み続けている。

 今日は第三章「オープンイノベーションにおける大企業のコアコンピタンスとは何か」(Wither Core Competencies in an Open Innovation World?)という部分で、Jens Fr?slev Christensenさんが執筆している。この論文は2006年に出版されたもので、少々古くなっているが、おもしろいアイディアがたくさんある。

 もっとも、コアコンピタンスとか、システムインテグレーションコンピタンスとか、よくのわからない言葉が出てきて困る。困るところは適当にとばして読んでいる。

 ともかくこの論文の中で「実践の組織力(bodys of practice)」という言葉が気になった。

 オープンイノベーションの考えは「優れた技術が大企業の枠外で生まれるようになってきている」という問題意識のものと、イノベーションの企業内外の関係を再構築しようというところにある。

 この論文のテーマは従来「コアコンピタンス」重視という歴史的な流れがあった。これは企業内の重要な要素、他にまねできない高い技術を重視することで、他社との競争に勝つばかりでなく、コンピタンスがもたらす技術力、高度さを志向する精神力が企業全体によい影響を与えるという考え方だと思う。

 この論文はコアコンピタンス路線とも言うべき社内開発重視の路線にあっても、社外でのイノベーションが補完的に重視されたこともあったし、さらに昨今では社外の革新的技術が大企業内での技術のあり方を大きく変えてしまうような現象も起こっていると分析している。

 その上で、社外のイノベーションを社内に取り込む過程について分析的に報告している。その際、筆者は「実践の組織力」という言葉を使っている。筆者は一つのイノベーションが実際に商品として利益をもたらすまでには「統合コンピタンス」(Integrative competencies)が威力を発揮するという。これは特定の技術的な知識が製品化され、現実に売れるものになっていくという現場の応用力だ。この現場の応用力というのが「実践の組織力(bodys of practice)」ということになる。

 一つのイノベーションが実際に市場に出るまでには、商品としての質の高さ、コスト、販売システムなど多くの要素が結びつき、統合されなければならない。こうした応用、実践の組織力が必要となることは言うまでもない。

 オープンイノベーションでは社外のイノベーションを社内に取り込まれ、新しい会社の組織展開をも変えていくようなダイナミズムが含まれている。筆者の問題意識はこうした社外イノベーションが社内に取り込まれていく際に、どのような応用力、つまり「実践の組織力」が必要であるかという点にある。

 オープンイノベーションには社外と社内とにそれぞれにイノベーションがあり、それがある種の対等な位置づけを持つという発想があるように思われる。その場合、社外でのイノベーションが社内でのイノベーションと同じだけの影響力を事業に与えるという点に関心が向いている。その場合に使われている言葉が「実践の組織力」だ。

 ちょうと、一つの生物が別の一つ生物を飲み込み、新しい一つの生物になっていくようなものだろうか。そのときに、別の生物を自分にどうかするだけの能力を「実践の組織力」と呼んでいるように思う。