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№1253 社長だまされたらあかんよ

№1253 社長だまされたらあかんよ
 トヨタデンソーなど圧倒的な大企業の場合、あまりトラブルは起こらない。私の経験ではもっちょっと下レベルからいろいろと問題が起こる。

 中規模企業ぐらいの企業の場合、一応全国的な展開したりして、かなりしっかりしている面はあるが、一方で小企業がからたたき上げてきた体質のようなものが残っている例が少なくない。それは、外注先や従業員に対する過酷さであったり、ずるさであったりする。

 私の依頼者の話だが、長く下請けを続けてきて安い単価に耐えてきたのだがついに採算がとれないところまで追い詰められた。そこで、親会社(法律的には親会社ではないが、受注を受けているので、みんな専属的なお客さんのことを親会社と呼んでいる。)意を決して単価の増額を申込み、そうでなければ取引から撤退するという決意をした。

 この場合、私達はいろいろなシュミレーションを行い、その後にどうなるかを繰り返し検討した。もし、そんなことをしたら、親会社は依頼者の会社の首を切るだろうか。仮に切らないとしても将来的には切ってくるのではないか。

 「親」会社も実際にはかなり私の依頼者に依存しており、もし、ここで依頼者の会社が引き上げられたら、親会社の生産は一次中断し、さらにトヨタのラインを止めてしまうという恐ろしい事態になる可能性があった。

 そこで、私達はまず、親会社に単価の切り上げを求め、そうでなければ直ちに撤退するという通告をすることにした。これはまさしく背水の陣で臨む戦略だ。通告後、数日で単価の増額を迫るという考え方だ。長びかせれば別の会社を見つける可能性がある。

 長引かせて対抗策を講じられては負けだ。

 社長は親会社に単価が低く、それが原因でリスケに及んだ旨を説明する。ただちに単価の上昇を求めた。親会社の担当者は待ってくれと言う。社長や幹部の了解も必要だと待ってくれと繰り返す。

 社長はそこで引き下がってはいけない。相手に余裕を与えらたら負けだ。ここは予想された言い分なので、さらにたたみかける。

 来週までに返事が欲しい。直ちに社長に直接会う談取りをとってほしい。そうでなければもう我慢ができないから引き上げることにする。

 来週の予定を取り付ける。
 面談ではどう臨むかは弁護士と戦略を立てていく。

 こうして、普段は会うことはなかった相手の社長と会い、予め用意した議事録、念書をつきつける。
 ここで、印を押さないともう後がないと思って欲しい。

 と強くせまる。

 それでの場で判を押せばよしだが、実際にはそうはいかない。解ったということで会社に持ち帰ることになるが、安易に持ち替えさせると長引かせて相手に準備の機会を与える。常に期限を区切り、撤退が本気だということを強い姿勢で見せつける必要がある。背水の陣というのはそういう戦略だ。

 こうして、背水の陣というのは結局のところ、懐に短刀を持って臨むというもので、相手会社に絶対にだまされない、当方の強いペースに巻き込んでいくような交渉となる。弁護士もあらかじめシナリオを作っておく上では役に立ちますね。