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№1241 中小企業学会「アジア大の分業」

№1241 中小企業学会「アジア大の分業」
 昨日今日と名古屋で中小企業学会が開かれたので出席してみた。さすがに研究者はよく知っている。いろいろためになった。

 今回のテーマは「アジアの分業構造と中小企業」だ。主催者の問題意識はグローバリゼーション進展する中、アジア経済圏での新しい分業の形ができつつあるというところにある。日本の中小企業はアジアの分業構造にいかにかかわっており、今後に発展はあるのかが今回論じられたと言ってよいように思う。

 報告は多岐にわたっているが、私が一番関心を持ったのは大企業、中小企業それぞれにグローバリゼーションがどのようにかかわっているかという点だ。この点、田中、渋井の両先生の報告はずいぶんおもしろかった。いずれも名城大学に所属しておられ、当地愛知県の大学らしく、トヨタなど自動車産業に関して論じていた。

 トヨタは2011年にグローバルビジョンを発表し、国際的には現地調達、生産の方針を出している。目新しいことではないが、アニュアルレポートには国内300万台を維持しつつ残りは海外で生産するという数字をあげている。国内では九州、中部、東北の3地点を拠点に展開し、それぞれに役割を担わせることになっている。

 問題はこうした大企業の動きにあわせて、自動車部品を調達する中小企業側がどのような営業戦略を持つべきことになるかという点にある。トヨタはグローバリゼーションの中、中国、ASEAN、日本と国際的な視座で政策を作り、それはアジア各地の地域の構造そのものも変えてしまうような内容を持っている。

 私の目から見れば、単に一企業のあり方を変えるという視点にとどまらず、アジアの地域そのものを変えながら事業を進めていくような強大な動きのように見える。もちろん、これは大企業の視点から見た問題意識ということになるだろう。

 一方で、2次サプライヤー以下の中小企業の視点からすれば、全てがトヨタにばかりに統制されているというわけではないというのが現状ではないだろうか。すでに系列の枠組が無くなり、2次サプライヤーからすれいばお客さんはトヨタばかりではないということになる。

 ともかく、中小企業はトヨタ関連で仕事をもらうために国内にあっては技術革新をつとめることになる。トヨタが三極路線を歩む以上、それに合わせることは必要なことだ。中部の企業は東北や北九州に進出するか、当地の企業と情報交換を進め、さらには何らかの連携をはかっていことになるだろう。。

 国際的には中国、ASEANに部品を売り込むための何らかの努力が必要になる。そこでも、たとえば中国に進出するか、あるいは中国のローカル企業との連携を探るのいずれかの選択となる。それは単純に共同して新しいものを作るというスタイルから、中国の企業を利用して日系大企業に売り込んでいくという操作になるかも知れない。

 今日のグローバリゼーションは情報通信手段、交通手段の飛躍的な進歩に支えられている。中小企業は商社を通すことなく直接アジアとつながることができるようになっている。今日のグローバリゼーションは中小企業からの視点から広がる国際的ネットワーク、大企業が築いた関係に関与する、中小企業者からのネットワークという視点の分析は非常重要なことのように思う。

 ついでながら、まだまとまっていないの恐縮だが、私なりのグローバリゼーションのイメージだが、中小企業のグローバリゼーションはもう一つのグローバリゼーションとしてオルタナティブな国際経済になればよいと願っている。