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№1231 中国企業再編はどのように始まるか

№1231 中国企業再編はどのように始まるか
 昨日、ある公認会計士の先生と話をしていた。彼は中国企業管理の専門家だ。当然、企業の撤退、再編の実務も手がけている。

 今、中国は大きく動いている。人件費の上昇は安い賃金によって資本を呼び寄せる構造が維持できないことを意味する。つまり、中国が世界の工場ではいられなくなるということを意味する。それに、土地バブルはいつ崩壊するか解らない。

 しかし、中国が大きな経済市場を作っていることは否定しようもない事実だ。ローカル企業も発達し、国際的な競争力も身につけつつある。中国での生産量や、中国進出希望企業も増えているという声もある。

 ともかく、中国は大きく動いている。それにあわせた企業の再編も必要になることがあるだろう。企業としては企業再編とはどんなことか知っておく必要がある。撤退したり、縮小したり、時には拡張したり、移動したりいろいろある。昔は不便なところでもインフラの整備によってさらに遠くに事業所を移動させることも可能になった。

 事業再編の手法はいろいろあるが、その手法の基本は撤退となる。進出、拡大についてはすでにノウハウも確立しているし、地元も好意的だ。しかし、縮小、撤退となるとそうはいかない。中国では法整備が遅れている上、地元が歓迎しない。人治主義の中国で地元に嫌われるということは大変なことだ。労働者対策だって大変だ。

 撤退に関する協議は具体的にはどのように始まるだろうか。
 既にブログで紹介したように、撤退そのものの戦略的枠組は日本とそう変わるものではない。精算、会社売却、事業譲渡、合併などM&Aの普通の手法が存在する。しかし、中国は非常に特殊な国だ。対象企業が「外資」であるという特殊性もある。どのような手法が選択されるかは専門家を交えた慎重な協議が必要となる。

 中国撤退は開始はまず企業分析から始まる。法務、経営・税務の専門家の立場から企業分析を始める。その上で、対政府、対税務、対出資者、対債権者、対労働者など撤退縮小のリスク分析が行われる。この企業の最大の問題点は何かを考えることになる。

 例えば、精算にともなって税務が洗い直され、莫大な追徴があるかもしれない。自治政府や開発区との優遇措置が問題かも知れない。労働者を押さえきれないかも知れない。パートナー企業など出資者対策がボトルネックになるかもしれない。

 こうした最大の問題点を協議し、そのリスクを最大限回避する手法は何になるかが検討されることになる。全体のスキームが決められ、全体をマネジメントする者、例えば弁護し、公認会計士、コンサルなどがスキームにそって不雑な手続きを順序立てて処理していくことになる。