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№1223 労災が起こったら?

№1223 労災が起こったら?
 労災が生じたら、労働者のために誠実に対応して、労災保険など必要な手続きを代行したり、協力したりすることが大切だ。企業防衛的には紛争を大きくしないことが肝要だ。

 例えば、製造ラインで機械に手を突っ込んでしまったばっかりに指を切断したとか、材料が足に落ちたが安全靴を着用していなかったとか、今でも初歩的な労災はまれにある。最近は省エネの影響ですぐに工場の電気を消してしまうため、ものに躓いて大けがをするという事故もある。

 労働災害が生じたら、労災保険保険制度を活用して労災保険の給付を目指すことになる。この場合、労働者において労働基準監督署に対して労災申請することになるのが建前だが、いろいろ書類が必要なので事業主が労災申請を代行することが多い。

 例えば、休業補償の給付を受けようと言う時、所定の請求書を作成することになるのだが、休業や平均賃金の内訳について事業主の証明が必要となる。

 労災事故の場合、労災保険からの給付とは別に事業主に対する損害賠償請求の問題もありうる。つまり、事業者には安全配慮義務と言って職場の安全に配慮する義務ある。例えば、安全性について職場での教育を怠っていたり、あるいは安全カバーを機械に取り付けていなかったりした場合、事業主の安全配慮義務が生じうる。

 これはけっこう大きな問題となる。上記のように例えば40才の従業員が親指を切断してしまうような大事故の場合、9級となる。年収500万円の労働者の場合、少なくとも以下の損害賠償が生じうる。これに休業損害とか加わってきたりする。

   【逸失利益】  500万円×0.35×14.643=2562万円
   【後遺障害慰謝料】 600万円~700万円

 これらの給付については労災保険から一部填補されるが十分ではない。
 このほか、刑事罰や監督庁の指導もはいることがある。

 労災問題については、いかにも事業主側がひどいような場合には安全配慮義務違反は問題になるが、そうでなくともむやみに労災を隠したり、労災手続きに非協力であったりして労働者との関係がこじれ、紛争が拡大することが多い。

 事業主としてはやるべきことはやり、誠実に対応することで労働者も会社にそれなりに感謝し、円満に終わることが多い。