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№1214 不正経理と修正申告の時期

 №1214 不正経理と修正申告の時期

不正経理による横領事犯では税務対策も必要
 取締役や経理担当事務員が不正経理によって会社のお金を横領するということがある。この場合、その取締役や事務員に対して責任追及することになるが、同時に税務上の対策も忘れてはならない。

横領事犯では「所得隠し」となってしまう
 今回紹介する審判例だが、経理担当事務員が給料を水増し計算して不正経理を行い、水増分を着服したという事件だ。本来の給料より水増ししているから、経費部分が膨らむ。当然利益が小さくなるため、税務申告では利益を過小に申告したことになる。

「所得隠し」では重加算税という罰が課せられる可能性があります
 もし、放置して税務署に発覚すれば、延滞税だけではなすまない。過少申告加算税や時には重加算税が加わり、その金額は非常に大きな金額となる。会社は横領された上に、さらに懲罰的な税が加わり、「泣き面に蜂」を絵に描いたような状態になる。

横領発覚時,すぐに修正申告した方がいいのでしょうか
 本件は従業員が給料計算を水増しして、水増し分を横領したのであるが、横領が発覚した段階で税務をどうしたらよいか税務署に相談した。税務署は直ちに調査に入り、不正を指摘した。一方、調査中、この会社は給料水増分について修正申告をした。

 しかし、税務署はこの会社に対して過少申告加算税、重加算税が賦課された。自主的に相談したのに重加算税まで賦課されるとは実に気の毒な事例だ。

発覚後,すぐに修正申告したほうがよいです
 国税通則法65条5項は「修正申告書の提出があつた場合において、その提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、適用しない。」と定めている。

 つまり、不正な経理があっても、調査前に自主的に修正申告すれば過少申告加算税、重加算税を賦課しないという条文だ。
 調査後であっても、調査とは無関係に自主的に修正しておけば、この条文が適用される。

事例では重加算税賦課処分は取り消されました
 本件は事前に相談したことを重視して、自主的な修正申告、つまり「予知してされたものでない」として過少申告加算税、重加算税の処分を取り消している。

  平成23年5月11日裁決「(国税通則法関係)更正の予知」
   (裁決事例集No.83収録)< http://www.kfs.go.jp/service/MP/01/0602030000.html#a83 >

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