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№1206 中国進出企業の撤退と新たな展開

№1206 中国進出企業の撤退と新たな展開
 最近、中国からの撤退が話題になっている。
 ひとたび中国に出たからには、死すとも返らず、ということで不退転の決意で臨んではいるが、時には撤退も考えなければならないと思っている企業も多いことだろう。

 それは、人経費や社会保障費の増加傾向に歯止めがかからないことが大きい。2012年全人代で中国政府は所得の倍増の方針を出している。この所得倍増は個々の労働者の所得の倍増で、単純にGDPの倍増とは訳が違う。
 尖閣諸島問題以来、中国全体が日本に冷たくなっている。かつてのような歓迎ムードは少なくなっている。中国経済全体も先行きが不透明になっている。いつバブルが崩壊するのだろうとみな心配している。

 もちろん、ただ撤退するだけではつまらない。せっかく中国でがんばってきたのだからその分の到達点を財産として残しておきたいといろいろ工夫している。多くの企業は中国との間にできた人間関係を利用できないかと考えている。撤退するにしても全面撤退するのではなくて、事業を何らかの形で存続させようというのだ。

 中国が大きな市場であることには変わりない。大企業は依然中国に進出している。市場のあるところで生産するというは事業上の大原則だ。大企業の日系企業に対する要求も強いものがあるだろう。中小企業と言えども中国に生産現場があることは日系大企業に対しては大きな信用となる。

 つまり、チャイナリスクの実情がかなりはっきりする一方で、市場としての魅力も存在する。さらには、中国国内でのこれまでの努力があるのでその到達点は財産として維持、発展したいという3つの考慮要素の中で企業があえいでいるというところだろう。

 そんなか、いくつかの企業では事業の本部を日本に残し、中国のローカル企業と連携をはかって生き残りをかけるという戦略に出ている企業がある。中国進出で築きあげてきた人脈と中国事情に詳しいという知識を利用した展開だ。

 さらに、本部を日本に移すのではなく、シンガポールや台湾に本部機能を移して中国を中心に東南アジアへの進出も考えている企業も出ている。アジアのローカル企業との連携は要するに自社を商社化して日本企業など大企業とアジアのローカル企業の橋渡しによって(マネジメント)によって利益をあげていこうというスタイルだ。そこでは、新工場の建設という資本投下が不要なので、全アジア的展開はやりやすい。