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№1199 不確実性とリアルオプション

№1199 不確実性とリアルオプション
 新規事業は常に不確実だ。リスクと言われているのは不確実性を言い換えたに過ぎない。社長は常にリスクを引き受けて決断するが、それは不確実な中にあって、将来を見通し決断するという作業を行うことになる。

 最近、私の知っている会社が中国に進出した。この会社は洗車ブラシを作っている会社で、中国での展開を考えている。しかし、自動車の洗車は思いの外うまくいかず、現在は中国の新幹線や地下鉄に売り込みをかけている。事業計画は不確実性の前に修正を迫られることになるが、一方で思わぬ事業展開をもたらすこともある。

 事業計画はあってないようなもの、事業展開にあわせて常に変化するというのはその通りだ。計画と実際との齟齬を見いだせない、常に新しい事業計画を展開できなければ企業は滅ぶ。しかし、そのことは事業計画がいらないということにはならない。

 このようは不確実性と計画性とどのように調和させるかというのは悩ましい問題ではあるが、その思考方法の一つにリアルオプションという考え方があるようだ。これは段階的に事業を展開するというもので、意外と平凡な発想なのだが、不確実性をチャンスととらえ、不確実な部分に積極的に打って出る発想を持つ。

 つまり、ビジネスチャンスがある一方で本当に計画通り進むか分からないことがある。自動車社会の中国で今後、洗車ブラシの需要が伸びるという見込みで進出するが、そうでないかもしれない。そのような場合にいきなり全体計画を立てるのではなく、初動の計画の中で必要な投資額はなにかを検討する。そのときに初動+次の展開を見通しておく計画手法だ。次の展開は不確実性を考慮して良好な展開と最悪の展開を両方を考えておく。

 さらに、この不確実性の研究は、不確実性の諸要素は具体的に何であるか、その諸要素が持つ不確実性はいかにしたら減らすことができるかを検討する。

 事業開始にあたって最初の仮定、「中国では自動車洗車ブラシは伸びる」というう仮定が間違っていればそれを修正しなければならない。相手が信用できないという不確実性は自ら社員を派遣するという方法で不確実性を減らすことができるかもしれない。こうした不確実性要因を分析し、さらにそれを減らす手法、経験を蓄積させるのがこのリアルオプションの考え方だ。

 リアルオプションという考え方は不確実性は常にビジネスチャンスととらえ、積極的に打って出ることを考える。
この積極性が重要なところだ。計画性にこだわり、リスクをとらない、リスクを安全側に評価しすぎて前に出ないというような消極性はない。

 一方で不確実性は現に存在するのでその要因と不確実性低減の手法を進めていく。そして、次のステップ、さらに事業展開するか、小規模のまま維持するか、さらには撤退するかを選択していく。

 平凡だが、意外と詰めkれない領域のことがらを最新の経営学は具体的に指し示してくれるようだ。