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№1177 弱い結びつきの強さ Strength of Weak Ties

№1177 弱い結びつきの強さ Strength of Weak Ties
 ひきつづき経営学の入門書から。
     → Book 「世界の経営学者はいま何を考えているのか」(入山章栄:英治出版

 組織が親密であると組織の創造性や生産性が高まっていく。ある研究ではこんな具合だ。
① 教師一人の能力が高いとその生徒は成績がよい。
② 教師の相互交流が盛んであると生徒は成績がよい。
③ 校長と教師の結びつきが強いと生徒は成績がよい。

 こうしたことから関係それ自体に価値があると考えられ、社会に存在する価値ある関係はソーシャル・キャピタル社会関係資本)として価値が認められている。流通システムだって、情報交流システムだって、社会の関係そのものが価値があるとされ、その構築のために大変なお金を投じることになる。

 この入門書のはいろいろなソーシャルキャピタルのうち、「弱い結びつきの強さ Strength of Weak Ties」、マーク・グラベッターが1973年に発表した論文を紹介している。

 日常的に強い結びつきをしている者同士のネットワークより、結びつきの薄い人との結びつきの方が情報交換システムとしては効率がよいというものだ。

 確かに、フェイスブックに情報を流した時に、共通の友達がたくさんいる人より、共通の友達が少ない人の方が、遠くまで伝わる気がする。つまり、自分の知らない世界に情報を発信できるし、自分の知らない世界の情報をもらうことができる。

 さらに、この弱い結びつきは簡単に作れるという利点もある。

 おもしろいのは、弱い結びつきが創造性(クリエイティビティ)と結びついているという点だ。ペリースミスさんは弱い結びつきが持つ創造性をテーマに研究し、特定の研究所のスーパーバイザーが弱い結びつきの人間関係をたくさん持っている方が創造的であるという結論をもたらした。

 弱い結びつきは容易で多く、気軽にたくさん作ることができる。これは、知識について、ある意味たくさんの
引き出しを持っていることに似ている。その知識の幅の広さが創造性を生むのだろう。意外な結びつき、たとえば廃棄物会社が食品会社に進出するなど、日本のローカルな中小企業が中国やベトナムで活躍しているなど人間関係の幅のひろさが意外性を産み、イノベーションにつながっていくことはよくある。

 創造性はそれまでにない視点から生まれるものだし、それまでにないことをしようとする場合には、それまでにない人たちと連携する必要も出てくるからだ。弱い結びつきの多さが創造性をもたらすとは私の実感とも合う。