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№1176 検収の持つ法的意味

№1176 検収の持つ法的意味
 製造ラインなどの設計製造は請負契約であるが、納入時常に完全とは限らない。ある程度の問題は生じ、あるときはシステムの不具合とされたり、あるときはユーザーの使い勝手の問題として処理されたりする。こうしたシステムの不具合が高じれば契約解除となって大きな問題となってしまう。

 その大きなターニングポイントが納入・検収の過程だ。この納入・検収を法的にどのように評価するかは実務的には非常に難しい問題となる。納入・検収の過程については基本契約書に記載されていたり、見積書・発注書に記載されてあったりする。多くは検収をもって履行の完了と見なし、その後に請負代金の残金が支払われている。

 基本契約書には受領者(ユーザー側)の検収義務も記載されていることが多く、例えば「10日以内に検収を行わない場合には検収したものと見なす」などと記載されていたりする。しかし、具体的にラインが納入され、検収が行われたとしても実際にシステムの欠陥があればそれは債務不履行となるであろうし、実用に堪えないということであれば仕事の瑕疵として解除の対象となったりする。

 そうであるなら、問題なのは「検収」というよりは、納入した機械、システムが実用に堪えるだけのものであるかどうかということになるだろう。検収の持つ意味は多少の不具合、使い勝手の問題があったとしても、それを実用に耐えられるものとして受け入れたということになるのではないだろうか。

 東京地裁H22.12.22(平成21ワ第2704号)はドリンク剤充填機の納入をめぐって争われた事例だ。原告は充填時に液の「液だれ」「はね」が生じるため実用に堪えないとして契約を解除し損害賠償請求を行った。これに対して、被告は実用を害する程度ではないとした。判決は「実用に堪えないほどのものではない」として債務不履行を認めなかった。

 この事件ではもちろん、「たれ」「はね」がどの程度のものであるかは重要な争点だったと思うが、判決文を見るとある意味プロセスを重視しているようにも見える。つまり、判決文では次の過程に分けて検討している。
 ① 本件機会の搬入、設置に至る経緯
 ② 納入後の調整作業
 
  本件機会の搬入、設置に至る段階では5回の運転試験で2回合格しており、不合格となったケースでも「液だれ、液はね・・・の頻度は低く」「発生状況に照らせば、商品に液剤が付着するおそれは低い」ので「実用に耐えないほどのものであったとは認めることはできない」とした。

 納入後の調整作業でも、ユーザー側の「容器として使われる瓶の底の厚さや形状にバラつきが生じていたこと」「洗浄工程が能力不足」などいくつか問題があり、本件機械以外の原因も考えられることから性能を満たしていないとはいえないとした。

 結局、納入に際しての最後の調整を瑕疵と見るかどうかは、専門的な機械となると当事者の納得はどこにあるかということになるように思う。その場合、納入・検収の過程を検討して当事者がどこで納得しようとしていたか、それは妥当かということを検討することになるのだろうと思う。