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№1202 倒産の夜

№1202 倒産の夜
 誰もが倒産のことなど考えたくもないだろう。私達弁護士はこうした倒産場面にしばしば立ち会うことになる。

 私の考え方は事業に収益力があるのであればできるだけ生き残りをかけて行動するというものだ。そのため破産の相談がある場合、時間をかけて真に生き残りをかけてチャンスをつかむことはできないかを考える。

 「会社の利益はどこから生まれていたのですか。」
 「負債の支払がなければ会社は存続できますか。」
 「会社には利益の出る部門とそうでない部門がありませんか。」
 「誰かの援助を受けることはできませんか。」

 しかし、それでも万策つきて倒産することがある。その場合、第一に資金について考えて倒産の時期を決めていく。この時、経営者が一番不安に思うのは倒産時の取り付け騒ぎなどだ。債権者が押し寄せて家族が物陰に隠れてじっと身を潜める、そんな明治が大正のころの風景が目にうかび、将来の見通しを心配する。

 「心配ありません。現在は大昔のような取立て騒ぎはありません。」
 「取引先にへんな所はありませんか。手形が妙なところに流通することはありませんか。」 「今後の展開は、次の様になります。債権者との交渉は全て弁護士が対応します。」

 倒産の時期は、賃金の支払いや売掛金などの回収時期を基準に決めていく。実は会社の倒産でも200万円ぐらいは必要になる。やや大きな会社であれば300万や500万円ぐらい必要な場合もある。まず、現金をきちんと回収し、さらに従業員などの最後の給料に責任を持つなどしていく。財産は弁護士がきちんと管理し、管財人に引き継いでく。

 「従業員に対しては最後まで責任を持っていただきます。」
 「回収したお金で、当面の給料や解雇予告手当を払います。」
 「ご家族の方が働いていらっしゃったら、そこにも給料を払います。」

 そして、倒産の時を迎え、従業員には全員解雇の通知を行う。現場では後片付けなどを進めてもらう。私達は現場に向かい、関係者と面談して今後の展開を説明する。財産の引渡は必ず弁護士の了解を得るようにしてもらう。また、不安が募る関係者に丁寧に今後の展開を説明することになる。

 「今後の処理は、全て弁護士にお任せいただきます。一部の方には会社に残っていただき残務を整理していただきます。」
 「今日では取り付け騒ぎなどはありません。多くの人たちはむしろ倒産に対しては同情的です。」
 「何か困り毎があれば、いつでも弁護士に問い合わせてください。」

  関係者と意思統一したあと、入り口に張り紙をする。倒産したこと、それには今後の連絡先は弁護士であること、工場内のものを持ち出した場合には刑事告訴することなどを書いてある。