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№1198 許されざる自救行為

№1198 許されざる自救行為
 世の中には中々理不尽なことが多い。

 家賃を払わず居座り続ける例などは典型的だ。家賃を払わず居座る事例では、家主としては裁判など待っていられない。損害は日々発生し、建物ローンだって存在することがある。ところが、法律は自力救済というの禁止している。家主が本人を無理矢理追い出すことはできない。

 確かに逆のこともある。自分の権利があるからといってやりたい放題されてしまったのでは困る場合も出てくる。これは山梨県の事件だが、ミネラルウォーターを製造するための配管が、ある所有者の土地を経由していた。この所有者は自分の土地に勝手に配管があるのはけしからんと言うので、製造メーカーに無断で切断してしまったのだ。

 法律は自力救済を原則として禁止している。東京地裁は無断で切断した地主に対して、538万円の支払を命じた(H24.4.27判事2160号47頁)。いくら地主でも法律上の手続きを経ないで行うことは許されない。本件では業務妨害罪で刑事事件に発展してもおかしくない事例だ。

 もっとも、自力救済が全くできなかといえばそうではない。判例は次のように述べている。
「法律に定める手続きによったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情の存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で」認められる(最高裁S40.12.7、判事436号37頁)

 かなり違うが、私達の間で有名なのが宇奈月温泉事件というのがある。これは温泉を通す配管がある地主の土地上を通っていたところ、無断で敷地を通っているということで、所有権に基づいて配管を撤去を求めた裁判だ。裁判所は地主の裁判は権利の濫用に当たるから認められないとした。