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№1188 顧問税理士の助言義務

№1188 顧問税理士の助言義務
 顧問税理士は税務についてどこまで助言義務があるだろうか。
 事案は、消費税課税事業者選択届出の提出をめぐって争った。課税売上高1000万円以下の場合、消費税課税事業者選択届出によって消費税の還付を受けることが可能な場合がある。原告は届出をしなかったために1594万円の還付が受けられなかったと主張した。

 顧問税理士がきちんと助言していれば、仕入控除を行い、1594万円の消費税還付を受けることができたはずだとして、税理士法人を訴えのである。税理士は1594万円を請求された。近時、経営コンサル志向の税理士にとっては考えさせられる事案だ。

 この事業者は映画の製作、販売、著作権管理などを行う会社であるが、第1期は創立時ということで売上は望めなかったため免税事業者となった。

 ところが、第2期ではDVD10万枚近く売上が予定され、2200万円を超える売上があり、課税事業者となった。そこで、期末在庫について仕入控除を行って消費税申告し、消費税の還付を受けようとした。

 ところが、原告は第3期において売上が大きく減少したために免税事業者なった。免税事業者は仕入控除が認められない。このときに、免税事業者とならないという届出をしていれば、第2期の仕入控除を行い、消費税還付を受けることができた。

 ちょっと話は複雑だが、原告としては税理士が原告の事業を予測して積極的に助言してくれれば消費税の還付を受けられたはずだというのである。

 判決は次のように述べ、依頼者からの問い合わせを前提に応じればよいした(判タ1382号161頁)。

「被告が本件顧問契約上なすべき業務は、基本的に契約書に明記された上記の税務代理や税務相談等の事項に限られるのであり、」

 「当該税務相談として原告からの税務に関する個別の相談又は問い合わせがない限り、被告において、原告に対し、原告の業務内容を積極的に調査し、又は予見して、原告の税務に関する経営判断に資する助言、指導を行う義務は原則としてない。」