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№1186 ほっかほっか亭 vs. ほっともっと

№1186 ほっかほっか亭 vs. ほっともっと
 平成24年1月30日、東京地方裁判所ほっかほっか亭経営者株式会社ほっかほっか亭総本部に対し、ほっともっと経営者株式会社ブレナスに5億0373万2742円を支払うよう命じた(判タ1382号163頁)。ほっかほっか亭がブレナスに対してフランチャイズ契約を終了したことが違法であるとした。

 フランチャイズのように継続的な契約関係を締結し、更新が予定されている契約については何らかの正当事由無くして解除することは許されない。当事者は更新が予定されていることを前提に多額の投資をしているのであるし、長年にわたってロイヤリティを支払っている。そのため、契約が更新されるであろうという期待は法的に保護されるべきだ。

 判決文によるとほっかほっか亭は昭和51年に1号店を開店し、昭和53年にフランチャイズ事業の展開を始めた。昭和54年には地区制度を導入し、地区本部には地区内での直営店や地区内でサブフランチャイズ契約の締結を許してきた。やがて、地区本部の上に地域本部が置かれるようになり、原告であるブレナスは九州地域及び東日本地域を担当する会社となっていた。

 原告ブレナスはやがて徐々に独立性を高めるようになり、ほっかほっか亭総本部と対立するようになった。そんな中、ほっかほっか亭総本部フランチャイズ契約の解除を始めたのである。

 原告ブレナスとしてはこれを記にほっかほっか亭総本部との関係を解消し、あらたに「」ほっともっと」を立ち上げていった。判決文を読んでいると、このあたりはとてもおもしろい。ブレナスが既存のフランチャイズにほっともっとに移るよう働きかけていったらしい。「その際、原告傘下の加盟店のうち、・・・1000店は原告と共に本件フランチャイズチェーンを離脱し・・・」となっている。猛烈な加盟店の取り合いが目に浮かぶようだ。

 ともかく、東京地裁はほっともっとに軍配をあげた。「以上によれば、本件更新拒絶は本件契約の全てについて、これが更新されることに対する原告の合理的な期待を侵害するものとして、債務不履行に該当するものと認められる」。

 法律的にはここでは契約上認められる「合理的期待」の内容が重要となる。私達が依頼者からの相談を受けた時もここのところの事情をよく聞くことになる。

 ともかく、ほっともっとは離脱後成績をあげていき平成23年2月末日時点では、国内第一位の持ち帰り弁当のフランチャイズチェーンに成長している。ほっともっとの社長はやはり優秀な経営者だったのだろう。

 ほっかほっか亭総本部は社長の力量が小さかったかもしれないが、地域ごとに独立性を認めて事業展開した組織方針が誤りだったという気がする。つまり、フランチャイズチェーンという「支配」を重要なコンセプトとする事業戦略であるにもかかわらず、独立性を高めてしまったというのは、フランチャイズ戦略から逸脱した発想だったということではないだろうか。