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№1142 名義貸しと貸主の責任

№1142 名義貸しと貸主の責任
 借財するときに、絶対迷惑かけない、名前だけ貸してくれという場合がある。しかし、そういう話はあり得ない。絶対迷惑かけないのであれば、そもそも名義など借りる必要は無い。名前だけ貸してもサインをした以上は名義人に責任がある。代表者たる者、むやみに判を押してはいけない。

 しかし、実際に名前だけ貸すという場合がある。
 単に形式的に契約名義人が第三者という場合がある。金銭は実質的借主にわたり、貸付は実際の借主の信用をもとに行われるような非常に特殊な場合となる。このような場合でも原則は有効な契約であるが、貸主が名義だけという認識だったような場合は心裡留保と言って、民法93条但書きにより法律上契約は無効となる。貸主としては名義人に対してはなんの請求もできない。

 この心裡留保という法理は銀行実務でも応用されている。
 銀行業務でも名前だけという例はないわけではない。例えば、迂回融資とよばれる場合だ。つまり、真実の借主の信用だけでは銀行ルールから言って貸し付けできない場合がある。この場合に、信用力ある会社の名義を利用して借り入れる場合がある。

 この迂回融資について銀行担当者が知っていたり、過失により知らなかった場合には、民法93条但書きの類推適用により無効となるとされている(最判小二H.7.7.7金法1436号31頁)。もちろん、一旦契約したものが無効となるというのはそう簡単ではない。この場合、銀行担当者が単に迂回融資だと知っていたというだけでは足りない。名義人が本当に責任を負担しないという合意があったような事情が必要であるとされている。

 いずれにしろ、2000年前後、バブル時代、へんな融資はいっぱいあった。
 社長たちは暴走し、銀行員も暴走社長に追随していた。そんなころにはこんな迂回融資に出くわすこともめずらしくなかったのである。

 もちろん、今でもあるかもしれない。中堅企業ぐらいになると、銀行とのつながりも深くなっていき、怪しい関係があるかもしれない。社長の暴走があるような場合にはこうしたへんな融資に対する点検も必要なことだ。