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№1140 幹部養成には「愛」がいる。(後編)

№1140 幹部養成には「愛」がいる。(後編)

 彼は社長を信頼できなくなっていた。だから、少しぐらい会社の金を使ったところでバチは当たらないだろうと気持ちがゆるんでしまった。最初は少ない金額だったがだんだん大きなお金になってもう会社に隠しきれなくなってしまった。

 確かに会社には身勝手なところがある。
 仕事上の義務は幹部ということで厳しい。この会社は仕事上の責任が大きいことと、過酷な労働に耐えるということと同じ意味に解していたところがある。「獅子は千尋の谷に我が子を落とす。」なんて思想が社長のどこかにあり、幹部社員を「千尋の谷」に落としていたのではないか。幹部は社長と違う。会社にとって他人だ。私生活だってある。社長のように自己実現のためにいろいろ犠牲にする立場の人間ではない。

 会社には「愛」が必要だ
 幹部社員にはその地位に相応しい責任がある。仕事上の厳しさは当然求められる。それは自分で判断せよ、自己責任で業務を実施しろという面がある。

 しかし、これは時間をかけて責任を大きくしなければならない面がある。これは子供の成長に似ている。徐々に知識や能力が広がっていく過程で自己責任の範囲を学び、自己責任の厳しさ、要求される高い倫理性を学び、裁量を実行できる能力を身につける。それは成長に責任を持つという愛情の問題だ。

 責任の大きさと自己犠牲との混同があってはならない。社長は自分を犠牲にして会社のために尽くしてきたと思っているかも知れない。しかし、社長の場合、少しも自分を犠牲にしていない。会社の発展と自己実現とは一致する。

 ところが、社員の場合、会社と自分とは一致しない。責任は責任としてあるし、成果が求められる。だが、会社は社員が自らの幸福を願う人間であることを忘れてはならない。労働条件、人間としての成長、弱さに対するサポート、私生活への配慮、など愛情をもった配慮と尊重が必要だ。