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№1126 チャイナリスク

 尖閣諸島問題をきっかけに経営者の間では中国に対する評価がどんどん変化している。エコノミストなど経済雑誌がこぞって中国を特集している。その特徴はなんと言っても、「そのうち好転するだろう」と思っていた人たちも「冷え切ってしばらく動かないだろう」という視点に変わってきたところだろう。中国はやはり強権的に報復する国で、油断ならないなという強い印象を持ち始めている。

 ある部品メーカー経営者、彼の会社は中国進出を果たしていて、以前も今も中国に対する熱烈支持者だ。それでも、中国プラス1が必要だと言うようになっている。あの社長が中国にある種の限界を感じるようになっているとは、今日の状況は余程ひどいと思わなければならない。

 私は経済はつくづく身勝手なものだと思う。靖国問題尖閣問題で冷え切っていると中国との関係もある種の見切りを行いつつ限定的な評価を進めて、中国とはもうこれまでと言わんばかりの論調になる。一方で、景気が良く、日本の景気が中国経済に支えられているとこれからは中国だというような前向きな評価が出てくる。私たちはどこかで冷静さとぶれない軸を持たなければならない。

 その中で、週間エコノミスト11/13号の「『政冷経冷』時代でも負けないビジネスモデル」(成田龍介)は有益な問題提起をしていると思う。この記事では日系進出企業の業態をBtoG(対政府)、BtoC(対消費者)、BtoB(対産業)と分けて分類し、それぞれの課題を整理し「中国を味方にする戦略」を提起している。短い記事なので詳しくはなっていないがかなり重要な視点ではないかと思う。

 つまり、中国は避けられない存在であるとして何をなすべきかという視点こそが今は必要だと言うことだろう。中国の領土拡張戦略とか中国経済の終焉といっためだった大きな分析もけっこうだろう。しかし、経営者としては中国という存在を前提として地道な分析と行動こそが必要ということになる。

 中国には消費者がいる。中国の製造業は年々水準を高め日本企業との取引量は進んでいる。部品を中国に輸出している日本企業も多い。中国は避けられない存在なのだ。あれこれ言ったところで中国から逃げることはできない。中国には依然ビジネスチャンスはある。

 前記記事はBtoB(対産業)の関係は尖閣諸島の影響は比較的受けていないと分析する。私の実感としてもそうだ。中国の場合、政府の役割が大きいのでBtoG(対政府)、BtoC(対消費者)の関係がめだつが、BtoB(対産業)は比較的安定している。お互い生きていかなければならないので、そう簡単に縁を切るわけにはいかない。当たり前と言えば当たり前だが、こういうところからぶれない経営軸を探していくことになるのだろう。