№1108 うつ病と情報収集
企業にとってうつ病はやっかいな病だ。本人の内面にかかわる面もあるため客観的な判断に限界がある。
精神科医であっても情報収集は本人からの訴えにかなり依存している。医師によっては、本人が眠れないと言えば不眠とし、本人が働けないと言えば就労困難とする。実際の生活にさかのぼってどれだけ判断しているか疑問な例もある。
それをひどい医師と評価するかは別だ。本人の訴えを誠実に受け止める医師がよい医師だという評価もある。しかし、一方で、本人の言うなりではないかと思うような診断書が出てくると医師の誠実さに疑問が残る。
また、うつ病の原因は複合的で個人の私生活、資質にも結びついている。そうした問題について会社はどこまで情報を収集できるかも問題だろう。そもそも、うつ病という精神疾患は人に知られたくないという面もあり、隠したいという考えにも正当性はある。
こうしたうつ病における情報の取り扱いについては、いろいろ問題があったとしても会社の姿勢としては「可能な限り情報を収集する」というのが基本的姿勢となる。その社員が期待通り働けるかどうか会社は知る権利があるし、労働者に対する適切な処遇という点でも知る義務がある。制約は制約としてきちんと受け止め、情報収集するという原則は崩せないだろう。
問題はどのようにして会社は情報を収集するかが問われることになる。労働契約上の調査権を会社は可能な限り持ち、本人の健康、プライバシー、希望などに配慮しつつ会社は情報収集を進めることになる。