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№1067 孫子の極意

№1067 孫子の極意
 長い時間かけて孫子を読了した。と言っても日本語訳ですけどね。
 毎晩,寝る前に少しずつ。ちょっと読むと眠くなるということを繰り返してきた。おかげで,前の方は忘れてしまった。こんなのを読んだと言えるのかね。でも,読んだには違いない。

 ずっと以前,ピアノを練習したことがある。1つの曲だけ一生懸命練習して,一応,弾けるようになった。ドビュッシー亜麻色の髪の乙女」だが,一応,弾いたには弾いた。へんてこでも弾いたには違いない。人には「亜麻色の髪の乙女」が弾けますと言えば,何となく弾けるのかなと驚かすことができる。
 そんなのはったりだって?

 バカにしてはいけない。かの孫子によれば,「兵とは詭道なり」,つまり,戦争は相手の心理を読み切り,人を騙しつつ,勝利を導くというのであるから,こんなのも孫子兵法の極意の1つだ。ドビュッシーで人を驚かすことだって孫子の極意だと言えないこともないじゃないか。
 だから,どうなんだって?

 もちろん,単に人を騙すばかりが勝利の道ではない。戦争は結局のところ,実力で決まる。「算多きは勝ち,算少なきは破る」。つまり,「算」とは,物量,人,多くの情報と多くの戦略の総合を言う。マネジメントのことですかね。経済力とか、兵力といった実力とそれを実行に結びつけるだけの明快なマネジメント能力が最後は勝利の鍵だということなのだろう。

 孫子の本当の極意は最後の章にある。
 孫子は「死者は以ってまた生くべからず」という。つまり,死んだ者は生き返られない。ものごとはむやみに争うなと言っている。「怒りは喜ぶべく,いきどおりはまた悦ぶべき」といい,一時の感情はまた元に戻るが,死者はもどらない。真の君主は利害得失を冷静に判断して本当に必要なときのみ動くべきだという。「風林火山」だ。

 そして,行動するのである。戦うときには「かれを知り,己れを知らば,百戦してあやうからず」。多くの戦略を総合し,最後には常に事実の冷静な分析のもと行動するのである。

 弁護士は常に軍師にたとえられる。私たちの役割は,事実を冷静に眺め,法という「道」を頼りに利害得失を判断し,勝算,つまり「算」を判断する。中小企業のみなさま,みなさまのお役にたちますように。