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№1058 事業承継と負債

№1058 事業承継と負債
 創業が古い企業には,負債が根雪のようにたまっていることが多い。

 運転資金を借り入れたものの,返済ができず,借り増しで対応するうちいだんだんと借金が積み重なっていく。そのうち,経営者にとって借金がある状態が当たり前になってしまう。銀行は会社をつぶすこともできず貸し続けるという状態が何年も続き,気づいてみれば常に売上げに近い借金がいつもある。

 このような企業で重要な点は,やはり事業が長く続いている点だ。どんな時でも利益がなければ借金は払えない。長期に借金を抱え込んでいるのは長期にわたって利益を生み出し続けているということに他ならない。銀行もこうした利益を生み出す事業であることを信用して貸し付けを続けている。

 しかし,注意して欲しい。経営者は寿命があるが事業は生き残る。経営者がしっかりしているうちに借金の問題をどこかで本格的に解決しておくことが必要だ。

【1】借金は返済する
  借りた金は返す。これは当たり前のことだ。長期にわたって根雪のたまった借金は長期にわたって返済するほかはない。明確な事業計画を作り,負債返済計画を立てる。例えば,負債を10年で半分にするというような見通しを立てる必要がある。いらない資産は換価して,負債を減らすことが必要だ。1つのメインバンクに頼らず複数の銀行とつきあい,常に金利,保証料の低い商品の選択していく姿勢が必要だ。長い期間では必ず景気のよい時期が来る。そのときに借金を大いに返済していく。

【2】負債を墓場に持って行く
  負債が年商を超えたりするような場合は私たちの感覚からすると将来的に借金を返済することはできないなと思ってしまう。そのような場合には大胆な改革も念頭に入れる必要がある。それは,長期的な計画の下に事業を分離独立させることだ。事業譲渡や会社分割と言った手法が考えられる。事業を譲渡し,残された会社は精算,破産する手法だ。社長個人の連帯保証債務は墓場に持って行ってもらうか,自己破産して消滅させる。

 これは,朽ち果てた巨木を思い切って切り倒し,新芽を残すことに似ている。中小企業の場合,事業に対する信用は会社そのものというよりは社長個人についている。社長がしっかりしているうちに別の事業体を育てて行くことも可能だ。

 実際の会社経営の現場では,上記の2つの手法を念頭に入れながら進めている。誰だって借金は返済したい。何でもかでも借金を踏み倒せばよいというものではない。顧問弁護士,顧問税理士をきちんと使いこなし,長期の事業計画をつくっていくことが必要だ。