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№1046 行政指導はこわい

№1046 行政指導はこわい
 公衆相手の事業を行う場合,様々な行政指導が入る。火災,衛生などはその典型だ。廃棄物処分業も厳しい行政指導が行われる。病院経営でも行政指導は厳しい。会社経営にあたって,行政対応は非常に重要な課題となる。

 行政指導に対しては,それに従うのが原則だ。行政は権力を持っているため変に逆らったら業務停止とか免許取消とかとんでもない目にあう。中小企業の場合,よくあるのが,訳の分からない精神論を振りかざして行政にどなり込む手合いだ。だだをこねればその場を通り過ぎると考えているようでは話にならない。

 行政指導は通常,法律や通達,規則,条例に基づいて実施される。もし,あなたが行政ときちんとした交渉を進めたいと思うのであれば,必ず行政指導の根拠にさかのぼる必要がある。私たちが行政交渉する場合には必ず根拠にさかのぼり,根拠づける事実は何かを検討する。弁護士が行政との関係でも普通の人とは違う交渉力を持つのは規則などの解釈,事実の検討について秀でているからに他ならない。

 ともかく,事業を営む上でコンプライアンスはとても大切で,軽い気持ちでコンプライアンスを軽視して,日常的に業務を進めると場合によっては倒産に追い込まれる。

 あるスーパー銭湯では浴場の管理を怠ったばかりに顧客がジレオネラ属菌に感染した。ジオネラ肺炎は回復しても肺が繊維化して元に戻らず,肺気腫が生じ,肺の機能が著しく低下してしまうという恐ろしい病気だ。このスーパー銭湯では集毛器を設置しておらず,滅菌器,濾過器もないという状況だった。保健所からも指導が入り,浴槽から基準を上回るジオネラ菌が検出された。

 被害者のこの肺炎をきっかけ群馬県知事はスーパー銭湯を営業停止処分とした。さらに,被害者は業者に対して,肺炎を罹患したことを理由に損害賠償請求の訴えを提起し,約3500万円の支払いが命ぜられた(前橋地裁H23.11.16,判時2148号88頁)。

 この事件後,スーパー銭湯はどうなったか分からないが,マスコミにも報道されただろうし,通常は事業の継続は困難だ。