№1037 天の災いに非ずして,将の過ちなり
孫子は兵書で,敗北は運のせいにすることはできない。全ては将の責任だと言い切っている。
つまり,軍には脱走者が多く出る場合がある。志気がたんでいたり,軍全体が落ち込んでいる場合もある。秩序を乱して崩れていく場合もあるし,戦いに敗れることもある。これらは運命のせいにできない。天がみはなしたのではないのだ。全ては将の責任にあるというのである。
それは,「天の災いに非ずして,将の過ちなり」というのである。
経営者は常に不確定要素を持っている。ことに中小企業は外部環境に左右されやすい。今のように異常なデフレ状態,円高があるとどんなに努力しても報われないものかと思うときもあるだろう。しかし,それは経営者の責任なのだ。どんな状況になっても経営者の責任で切り抜けなければならない。外部環境のせいにすることはできない。
戦争は相手にいることだから自分の思い通りになるとは限らない。3000年前の時代であればなおさらだ。地形や天候にも大きく左右される。不確定な要素が多く,武運を天に祈ることは当たり前だったろう。
しかし,そんな不確定要素の多い時代であってなお孫子は次のように述べている。
「彼を知り己れを知らば,百戦して殆(あや)うからず」
この「危うからず」というのは必ず勝つ,必ずリスクを避けることができるという意味だ。もちろん、戦争に「必ず」という言葉はない。しかし、孫子はあえて「殆うからず」と言ってのけていることが重要だ。それは、「将の過ち」として、全責任を引き受ける覚悟を示していると言える。
「地を知り天を知らば、勝は乃ち(すなわち)全うする」
情勢を適切に分析すれば必ず勝機がある。大切なのは勝機を見いだす分析力、判断力、立案能力だ。その必ずある勝機を得られなかったのは、「将の過ち」、将軍の能力が無かったからだというのである。
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