№1027 風林火山
其の疾き(はやき)こと風の如く
其の徐か(しずか)なること林の如く
侵略すること火の如く
動かざること山の如く
この言葉を孫子は「軍争の法」として述べている。孫子の時代は10万人であるとか,30万人であるとかいった兵士を動かしていた。将軍は地理や天候,敵兵の配置など様々な動きを判断して兵士たちを配置し,作戦に基づいて動かしていた。
しかし,組織は一つの役割で動くわけではない。それぞれの持ち場があり,それぞれの持ち場に応じて忙しい時期も違う。持ち場同士の連携も必要だろう。組織の違った役割もつ集団が,それでも組織として共通の姿勢を持つことが必要となる。風林火山は集団が「その疾きこと風の如く」という共通の心中にもっていくというところの極意を示している。
戦争の時の兵士たちの気持ちを想像すると,こうした極意を共通にすることの意味が見えてくるかもしれない。兵士たちは移動を一斉に指示され,「其の疾き(はやき)こと風の如く」と伝えられ,そのように組織が動けるよう手配しているかもしれない。その時の指示の伝達,動くときは風の如くあれという共通の価値観の日常的な涵養,風の如く動くことのできる体制とやるべきことは多いが,最後には「風の如く」という共通の価値に収れんしていく。
風林火山は大きな組織が分業にもかかわらず共通の価値を持つよりどころを示した言葉だと思う。