№982 在庫がたまる
ある企業はリーマンショック以降、深刻な経営危機に陥った。商品が急激に売れなくなったのだ。在庫がたまり始め、反対に債務が膨らんでいる。借入で入ったお金は在庫となって会社に残っている勘定だ。
もちろん、在庫が残ったというのは結果でしかない。在庫そのものが悪いというのではなく、大量の在庫を抱える原因となった要因を分析することがこの会社の立ち直りのきっかけになると考えている。
製造業の場合、注文の数だけ生産するのが本来の姿だ。しかし、これが卸しや小売りも行っている場合はお客が敏感に動いていくためこの調整が難しい。在庫がなければお客があっても売れない、機会損失のリスクが高まることになる。
こんなことは当たり前だということになるが、アパレル系など顧客が流行に左右される商品では在庫の問題は死命を制する。移ろいやすい顧客の動向を読み、生産品目や生産量を調整しなければならない。この場合は現場情報をつかむシステムが整備されているかが問題となる。
この企業の場合不幸だったのは、ブランド化を行うために多額の投資を行い、効果が出る前にリーマンショックによって消費が冷え込んでしまったことだ。不況下、贅沢品を押さえていくというのが当時の状況だった。売り込みのための在庫が一気にこの会社を襲ったのだ。
製造から小売りまで手がける事業は在庫をどのように考えるかは実に切実な問題だ。私のような門外漢がこのようにあれこれ書いていても、シロウトが何を言うかと鼻でせせら笑っているかもしれない。
しかし、私たちの意見も案外、的を得ているかもしれないのだ。この会社の場合、そもそも根本的にはブランド化による高付加価値商品の販売というビジネスモデルにふさわしい商品の品質、価格設定、販売ルートの確立があるかとうい点がそもそも問われなければならない。
安価な大量販売とはまるで違った発想がどこかに必要で、そこに気づかずに今まで通りの流れに任せていることが問題かもしれない。
こうした根本問題を提起して洗い直してもらうといのも役に立つことがあると思う。