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№939 部長のわいせつ行為

№939 部長のわいせつ行為
 セクハラは飲酒に関係して起こることが多い。
 ある会社の部長がセクハラを起こして懲戒解雇された事例だ。

 顧客先に複数の女性スタッフと一緒に出張し、その際に懇親会などとと言って飲酒することもある。その後に酔った勢い、あるいは介抱などと言って、女性スタッフのホテル室内に入り込む部長も世の中に入る。それだけではなく、女性の体さわる、部屋から出て行かないなどという事例も世の中にあるのだ。

 女性と男性との腕力の差、若い女性と部長との年齢の差、女性の従順な傾向などから、若い派遣社員などは部長が強引にホテルの部屋に入ってきたら拒めない状態になる。女性がはっきり断らないことをいいことに、一晩中女性の部屋にいる、女性の横に寝ようとする、体に触るなどというの聞くもおぞましいことだ。

 セクハラ問題は常に「李下に冠を正さず」の気持ちで臨まなければ防ぐことはできない。社内教育も常に節度を意識させる必要がある。

 倫理を失った部長は懲戒解雇されたのであるが、解雇を無効を争った。一晩中女性がいるの部屋に居座ったのであるが、途中、いっしょにコンビニに行く、女性がフロに入るなどの行為があったために勘違いしたらしい。こうした自分勝手な勘違いがセクハラの始まりとなる。

 判決は部長の行為を厳しく非難し、解雇は正当であるとした。さらに、部長の解雇無効の裁判は、わいせつな行為をしたことを十分承知で訴え提起したもので、裁判そのものが許されないと判示して、会社の弁護士費用相当額の支払いを命じた(東京地裁H22.12.27、判タ1360号137頁)。

 判決で認定された事実では、部長のわいせつ行為はとてもひどいもので、強制わいせつ罪で立件されてもおかしくない事例だった。

 なお、会社は社内調査費用も賠償請求したが、これは認めなかった。
「一般に、従業員が懲戒処分に該当する行為を行った場合、使用者である会社が、適切な処分を行うため、事実関係の調査等を行うことは当然のことであり、そのために要する通常の経費等に関しては、企業の一般的人事管理に要する経費として折り込み済みのものと解する」とし、相当因果関係にないとしたのである。