№937 トイレブースの扉事故と製造物責任
製造物責任は思わぬ形でやってきます
トイレ内には便器ごとにブースがあるが、その扉で指が挟まり、児童が手指を切断する事故が起こった。トイレのドアを製造したメーカーに責任はあるだろうか。製造物責任は思わぬ形でやってくる。
トイレブースのドアで親指を切断した事例があります
この事件はトイレブースのドアの、ちょうつがい部分に指を挟んだという事例だ。取って側に指を挟むことは珍しいことではない。しかし、反対側、ちょうつがい部分に指を挟むこつはあまり私たちは想定していない。
このちょうつがい部分について、扉を開けると2cm程度のすき間ができた。このドアは学童保育クラブのトイレに設置され、小学校に通う児童が使用することが想定されていた。このすき間に子供の親指が入り、しまった際に親指が切断されてしまったのだ。
聞くも恐ろしい事件だが、原告はこのドアの構造に問題があるとして、トイレブースのメーカーに製造物責任を追求した。つまり、指を挟むような構造になっているのはトイレブースとしては「欠陥」であるというのである。
製造物責任法2条2項は「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、」などを考慮して「通常有するべき安全性を欠いていること」を「欠陥」と定義している。判決では、本来の用法に従って利用する限り指詰めは起こりえないとしてメーカーの責任を否定した(東京地裁H23.2.9、判タ1360号240頁)。
世の中にはいろいろなことが起こる。トイレブースが学童保育に取り付けられること自体は予見できた。子供が不合理な行動を取ることは予見可能だ。このような論理に立てば、この企業は負けていたかもしれない。
ともかく、製造物責任についてはいつ、どのように責任追及されるか分からない。全ての可能性に対策を立てることは難しい部分がある。こうした場合、説明書で補うことこといんある。適切な警告文を付することで責任を免れることがある。例えば、こんにゃくゼリーでは老人、子供に食べさせないなど警告が表示されている。
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