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№878 弁護士による交渉

№878 弁護士による交渉

 弁護士は交渉のプロだ。いったい、私たち弁護士はどんなスタイルで交渉するだろうか。


 

弁護士が交渉を引き受ける時は案件に先立って、依頼者の権利に対する値踏みを行う。

  例えば相手が特許権を主張してきた場合、相手の特許権の射程範囲を考える。この場合、普通と違うのは相手が本当に特許権を持っているのかというそもそも論から一応検討することだ。相手は、特許権者というが実際には発明を盗んだ冒認特許(他人の発明を自己の発明であるかのように装うこと)かもしれない。

 次に権利がどこまで主張できるかを考える。

 権利というのは事実を基にして発生する。例えば、売買契約が存在して代金を支払えば物の所有権を得ることができる。この場合、売買という事実、代金支払いの事実という事実が大切だということになる。つまり、証拠がそろい、事実をどこまで認めさせることができるかが味噌となる。

 この事実をどこまで認めさせることができるかはだんだん弁護士の領域となってくる。手持ちの証拠では不十分である場合に、不十分であることをあっさり認めて次の策を考えるか、相手に対して証拠十分と思わせるかなどいろいろ考えることになる。交渉の常として、ぎりぎりまで証拠がそろっている、裁判やれば勝てるといった雰囲気を作ることはとても大切なことになる。

 交渉を有利に運ぶための雰囲気を作る。

 この雰囲気づくりが弁護士によってかなり異なる。ある弁護士はやたらと強気に出てくる。しかし、こいつはいかにもはったり臭くてがんがんつついて本当のところを引き出さないといけない。ある弁護士は、誠実に自らの射程範囲を示して交渉に臨んでくる。これは手強い相手ということになる。隙がないからだ。証拠の射程範囲については弁護士の見解の相違があるから、この見解の相違で有利に交渉を運ぶことが弁護士の手腕ということになる。

 ところで、弁護士が出てくれば何でも有利に進むと思ったら大間違いだ。

 大切なのは事実だ。事実がなければ優秀な弁護士でもどうにもならない。しかし、シロウトが交渉に臨む場合は、事実の重みを評価できないため、思わぬ不利な状況に立たされる。仮に自分で交渉するにしても、弁護士とよく相談して、自らの持っているカードの重みを正確に知っておく必要がある。ジョーカーを持っていても、それがオールマイティであることを知らなければ切り札にすることはできず、ゲームに負けてしまう。