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№852 連帯保証は罪深い。その問題点

№852 連帯保証は罪深い。その問題点
 金融庁平成23年7月14日に金融監督マニュアルなどを改訂した。その改訂では連帯保証について次の2点を重点課題としている。
  ① 経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立
 ② 保証履行時における保証人の資産、収入を踏まえた対応

 これらの課題から銀行など金融機関を監督する指針などを次の通り改訂している。
 ① 経営者以外の第三者の個人連帯保証の原則的禁止。
 ② 経営者以外の第三者の個人連帯保証に当たっての説明責任の強化
 ③ 経営者など連帯保証人に履行請求する場合の履行能力を配慮したきめ細かな配慮

  これらの改訂を踏まえた現場はどうだろうか。何か変化はあったろうか。

 最近、ある年金生活者の相談を受けた。この老人は遠い親戚筋から平成9年ころ連帯保証を頼まれた。当時、金融機関から「もう一人連帯保証人が必要」と指示されらしい。社長夫婦に土下座され、4時間粘られてついて判を押すことになった。判は翌日朝、金融機関で押されている。金融機関と老人との面識はなかった。

 平成10年になって保証協会が代位弁済し、その後、社長らは粘りに粘って平成23年に至った。実に13年、債務不履行状態が続いたのだ。そして、今になって、保証協会は連帯保証人であった老人に連帯保証債務の履行を求めて裁判してきたのだ。利息・遅延損害金だけで、元金の2倍になっている。こんなことが許されるのだろうか。

 連帯保証人は義理、人情でなることが多い。事業の状態など連帯保証人は知るよしもない。社長は「形だけだから」「絶対に迷惑をかけません」などと苦し紛れに適当なことを言う。金融機関だって決算の状態を見れば危ないことはすぐ分かる。連帯保証人はそうした情報を知らず情宜だけで巨額の債務を負担するのだ。情報の偏在から来る不正義、不公平がある。近代社会は個人の自由な意思決定で契約は締結されるべきだ。こうした情報の著しい偏在にあっての契約など本当に意味があるのだろうか。

 情宜でなるような例は事業には関係がない。連帯保証人であることによって利益を受けることもない。金融機関は保証協会の保証を受けられるので損をすることはない。何の利益も受けることなく、巨額な負担のみ負わせる方法がまともなやり方とは思えない。

 そもそも、この例からは金融機関が連帯保証人を要求したのだが、もとはと言えば保証協会が要求したのだろう。保証協会の罪は大きい。保証協会は中小企業の信用リスクを引き受けるために認められた機関であって、最終的な信用不安を引き受けるべき存在だ。それを事業に無関係な第三者に転嫁するのは信用保証協会法の趣旨に反するのではないだろうか。

 私の経験した例では、大学卒業したばかりの娘を連帯保証人した例がある。娘は父親の会社に勤務したわけでもない。その後、会社は倒産し、娘は1億円を越える負債を負った。私はつくづく連帯保証制度は罪深いと思う。それを平然を進めてきた銀行や保証協会もどうかしている。