№837 中国 裁判事例
中国では全ての権力は
最高人民会議に所属している。裁判所と言えども例外ではないため、司法の独立という考えはない。地域の裁判所は行政機関の一部であり、
最高人民法院に統制される。
こうした中央統制が強いことや、
判例法という考え方が無いため、裁判研究が十分ではない。まして、日本において中国裁
判例を検討することは中々難しい。
NBL132号は中国のビジネス
判例を集めた数少ない文献だ。その中からおもしろい事例があったので紹介したい。
事例はちょっと複雑だ。
A銀行はB技術
公司に1億元を貸し付けた。B技術
公司はC証券
公司に1億元の資金の投資管理を委託した。ところが、B技術
公司は期限になっても1億円を返済しない。
中国法によると投資管理業務で利益保証をすることは許されない(証券法144条)。そのため、B技術
公司とC証券
公司との管理業務契約は無効となる。C証券
公司は1億元を返還しなければならない。
そこで、A銀行は、B技術
公司とC証券
公司を被告にして1億元の返還を求めて訴えを提起した。ここでは「
債権者代位権」という制度を使っている。B技術
公司のC証券
公司に対する返還請求権について、直接A銀行に支払って欲しいと請求したのだ。
中国契約法で73条には「
債権者代位権」制度が認められている。本人が支払わないときに、第
三者に対して有する債権を代わって行使する制度だ。請負人が支払わないときに、元請けに直接請求するような制度だ。
中国
人民法院はA銀行の請求を認容し、第
三者の地位に立つC証券
公司に1億元の支払いを命じた。
債権者代位権という制度は、普通の人は知らない。債務者が第
三者に対して有する債権を代わって行使して入金しようという制度だ。日本にもあるが、「無資力」要件というのがあって、債務者にお金がない場合にしか使えない。そのため、使い勝手が悪い。
これに対して中国は「無資力」要件がないので使いやすそうだ。裁判によらなければ行使できなが、日本においてもどうせ裁判にならなければ使わないような制度だから、差違はないように思う。