この当たりは通常の売買、例えばコンビニでお弁当を買うのと法律的な構造は全く同じだ。ただ、コンビニでは物が商品で形があるが、M&Aでは会社という、ある意味法的枠組で規制されて初めて商品になる形が不明確なものである点で異なる。
例えば10億円で株式を購入する場合、次のようになる。
① SPC(Special Purpose Company)と呼ばれる管理会社を買主が例えば5億円で設立する。
② SPCはどこかから5億円の融資を得る。SPCは出資5億円、融資5億円で10億円の資金を獲得する。
③ SPCは10億円で売主より株式を購入する。
④ 対象会社はSPCを吸収合併する。
このときに、買主には対象会社の株式が割り当てられる。
また、SPCが持っている株は自己株式となる。
さらに、債務は対象会社に移るため、返済は対象会社が行うことになる。
結局、買主は次のメリットを得ることになる。
① 5億円の出資で、10億円の会社を購入できる。
入れたお金より、効果がぐっと大きくなるのでレバレッジ(梃子)と呼ばれる。
② 買主としての責任を負わない。
売り主については特別なメリットはなく、むしろ、実際の買主が法的責任を負わない構造になっているため、不利益があると言える。
この手法は、5億円の融資を対象会社の利益によって返済していくもので、あるが、対象会社の負担が大きい。10億円の価値しかない企業が、5億円の債務を返済できるのだろうか。中小企業の場合は経営がよいといってそんなによい企業があるとは思えない。オーナーは売り抜けるからいいが、残された社員の苦労を考えると私はあまり賛成できない。