名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№791 時には会計事務所を変えることも・・・

№791 時には会計事務所を変えることも・・・
 日常的な会計を明確にして月次の決算が可能なところまでもっていくことは大切なことだ。自社の損益分岐点はどこか、売上の目標の達成状況や利益率の推移も把握することが必要だろう。キャッシュフローも正確に把握していくことも必要だ。当座のたまり具合だけで判断していると不測の変化に耐えられない。

 私の依頼者も経理上の問題があった。
 業績は急激に伸びていたが、それに見合っただけの利益は出ていなかった。社長はそれは初期投資のためやむえないと考えていた。つまり、新規事業が確立するまでは成長のための投資が必要で、販売管理費などが膨らんでいてもしかたがないと考えていたのだ。

 たしかにその通りだ。事業を立ち上げるにはリスクを引き受けなければならない。そのリスクとは投資だ。しかし、新事業の粗利はどうなっているのか、経常利益はどうなっているのかといった基本的な視点は必要だ。会計を部門別に独立させて可能な限り正確に把握しておくことが必要だ。

 事業は急激に成長した。わずか5年ぐらいで数億の売上を確保した。
 しかし、昨今のリーマンショック以降、成長がマイナスに転じてしまった。毎月売上が減少し、回復の兆しはない。しかし、膨らんだ経費は急には縮まない。この時点になって、社長は新規部門の財務状況がほとんど把握されていないことを自覚した。

 会社を救うためには思い切ったリストラが必要だ。しかし、思い切ったリストラでこの部門の経常利益はプラスに転じるだろうか。どこまで、リストラすればよいのだろうか。これまで投資で事業はどこまで成長してきたのだろうか。

 融資に対する対策も必要だった。
 新規融資も必要かも知れないが、毎月のキャッシュフローを正確にし、銀行の支払いが可能なようにしなければならない。銀行の債務については借り換えによって返済期限を延長させ月当たりの返済額を小さくする必要がある。複数の銀行を利用して金利負担を少しでも減らさなければならない。
 
 この間、私たちは財務状況の把握、債務対策など繰り返し協議してきた。最近になって全ての政策がうまく行き始め、この会社はほぼ生き残るところまできた。社長、社員のみなさんは本当によく努力した。しかし、こうなるまでの背景にはリーマンショックという外部環境もあるが、会計事務所の責任も大きいのではないかと思っている。

 事業が急激に成長しているときに新部門の財務の正確な把握を警告しなかったのだろうか。急激に悪化し始めたときに、新部門の財務状況を把握するための改善点の指摘はできなかったのだろうか。財務が悪化して、会社はリストラに入り、新規融資を確保し、既存債務の対策が必要になったのだが、この難しい問題にともに立ち向かうことはできなかったのだろうか。

 少なくとも、社長がこうした問題を相談するような関係を作ることができなかったのだろうか。