№781 中小企業のM&A、弁護士の役割
そこそこ成長しつつある企業であれば中小企業でもM&Aの対象となるようだ。
弁護士としては何に注意するべきだろうか。
M&Aは取引額が高額であること、比較的短期に1回限りの取引が行われること、企業価値の目利きが難しいことなどの特徴がある。これらの特徴から企業売買に当たっての双方の期待が正確に反映されるよう契約書は詳細となる。
契約の核心となるのは企業価値の明確化とその価値の確実な移転である。
価値の正確性は価値の根拠となった資料によって担保されることになる。売主は価値判断を正確にするために多くの資料を求め、さらにそれらの資料に裏付けられた結果が正確であるという保証を求める。M&A取引に於いては、この「保証」が契約の中核をなすと言っても良い。
この保証ということについては、表明保証(Repuresentations and Warranties)がM&Aの取引の特徴となっている。表明保証の法的性格については瑕疵担保、契約責任といろいろ考えられているが、基本的には契約責任であると言って良いと思う。
例えば、財務諸表が正確であること、当該企業の価値を決める知的財産、特殊技術が確実に存在すること、労働問題がないことなど表明の内容は多岐にわたる。
これらは当事者の企業価値に対する期待が「表明」という形で明らかになっているということになると思う。従って、M&A契約においては、第一に当事者がいかなる価値に注目して取引しようとしているかを正確に把握し、それに関連する資料が正確であるか、万一、価値が満たされない結果になった場合にはどのようになるのか、こういった視点で契約に取り組んでいくことになるだろう。