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№770 奄美「自然の権利」訴訟

№770 奄美「自然の権利」訴訟
 私の事務所ではCSRとして環境問題に取り組んでいる。
 いろいろな環境問題に取り組むのだが、野生生物の保護の特に力を入れている。読者のみなさまには、アマミノクロウサギ訴訟をご存じの方もいるのではないだろうか。もう15年ぐらい前の話になるが、私はアマミノクロウサギを原告として裁判をしたことがある。

 当時は、ウサギが法廷にやってくるということで大騒ぎだった。朝日新聞の全国版1面に大きく取り上げられたほか、九州地方の新聞は連日報道していた。NHKではクローズアップ現代という番組で取り上げたし、「生き物地球気候」という番組でも奄美大島の野生生物が特集された。読売新聞ではアマミノクロウサギの権利について、全面広告まで出てしまった。国会でも、アマミノクロウサギを守る国会議員の会というのも作っていただいた。

 ともかく、自然にも権利があるのかという深遠なテーマがいろいろなところで語られたのだ。今でも、高校の倫理の教科書に出てくるし、法学部の最初の講義でよく引用される。

 さて、なぜ、アマミノクロウサギだったのだろうか。環境裁判というのは世間の注目を浴びることで支持を取り付け、保護を図っていくという手法がとられる。我々の間ではメディアワークと呼ばれている手法だ。ウサギ原告というのはこのメディアワークの一つでもある。

 ところで、メディアワークというのは単に目立つだけではダメだ。メディアは常に本物を求めている。時代が求める本物がわかりやすく、目立つ形で提起されるとき、報道の大きな流れに乗ることができる。「自然の権利」は、人間と自然との関係はどんな関係だろうかという問題提起が世間の支持を受けた。

 ウサギの裁判はおりしも、「隣のトトロ」、「もののけ姫」などジブリが大流行する直前だった。世間の多くが自然と友達でいたいとの思いを強くし始めた時代だったのである。この時流に乗る呼吸は非常に難しい。

 もちろん、この手法は、企業がブランド価値を高めていく手法に似ている。