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№707 会社分割手続と債務追及の回避

№707 会社分割手続と債務追及の回避
 私は依頼者のために会社分割の問題を整理している。

1. 会社分割と債務の関係
 会社分割は株式の交付、交換などを通じて組織そのものを分割、移転、吸収する。借金は分割会社(旧会社)に残して、優良部門を分けることも可能だ。優良部門を引き受けた新会社は債務の足かせがない。債権者から見れば優良部門は元気なのに借金は返してもらえないという不合理なことが起こる。

2. 前回でのまとでは会社分割の特徴は次の通りであった。
① 会社分割では、事業の「全部」を新会社に譲渡してもよい。
  その結果、分割会社(旧会社)に財産が残らなくてもよい。
② 新会社は分割会社(旧会社)に相当の株式を交付する。
  そのため、たてまえ上分割会社に損はないとされている。
③ 債務が分割会社に残る場合には、会社財産の変動はないとされるため債権者の保護は図られていない。
④ 分割の結果、分割会社に債務履行の見込みが無くなっても分割手続きを進めることは許される。

3. 以上のようにまとめた場合、債務を免れるために次ような手段が可能となる。
① 新会社を設立して、分割契約を結ぶ。新会社には特定の優良部門に関する事業と関連する資産を譲渡する。その結果、分割会社は優良部門を失い、幽霊のような会社になる。
② 新会社は分割会社に相当の株式を譲渡する。分割会社は建前上は新株を取得するので計算上は損がないとされる。
③ 分割会社は新会社の株式を取得するのであるが、すぐにスポンサーに売却してしまう。そうなると、分割会社には新会社の株式すらなくなってしまう。
④ さらに、分割会社が破産もせず、幽霊のまま放置されれば、際だった責任追及もない。

4. 会社はもぬけの殻に
  わかるだろうか.。会社の価値は資産で決まるというよりは、事業部門の優劣で決まる。仮に旧会社に資産を残しても、優良部門が無くなれば債権回収は難しい。会社分割では新会社に事業のみを移して、借金は旧会社に残してしまうので、旧会社の債権者は分割されるとどうしようもなくなる。特に、会社法では分割会社の債権者の保護がほとんどないために不満は残る。