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№644 金は銀行にある。その2

№644 金は銀行にある。その2
戦略的態度とはいったいどのような態度だろうか。
それは、企業の持続と発展という大目標のために、「銀行を知り、己を知れば百戦して殆うからず。」の極意である。
 
① 交渉相手は誰か
  銀行交渉の窓口は銀行担当者だ。私たちは日常的に担当者と接していく。でも、担当者の背後には必ず決済がある。支店の決済の向こうには本店決済がある。さらに、その向こうには金融庁の審査がある。あるいは、保証協会などがあるかもしれない。
 
  私たちの交渉相手は日本の金融政策も含めた大きな動きとなる。つくづく思うのだが、金融問題ほど金融政策がストレートに現場に反映することは少ないと思う。私たちはいつも政策の流れも理解する必要がある。
 
  これはけっして、抽象的な話ではない。
  例えば、担当窓口がどうも冴えない時、その背後にある支店長にだって交渉の窓口を持つことは有益だ。追加の融資や支払いについては決済時に何が求められているかを検討しなければならない。謝絶があれば、その交渉相手は窓口ではなく、背後の決裁者たちだ。それを探っていく作業だってある。別の銀行だって信用金庫だってある。
 
② 交渉内容は何か。
  条件の変更、支払いの延期、追加の融資、交渉の獲得課題は様々だ。追加していくら欲しいのか、「金は銀行にある」、そのための交渉内容をどうしていうことになるか。
  昨今の銀行交渉は「借り主が主体的に仕掛ける」が基本だ。金融検査マニュアル別冊が公表され、借入の基準もある程度明らかになっている。金融円滑化法もあって、銀行側も顧客とのやりとりは避けられない。
  「いったい、どこをどうしたら貸してくれんだ。」と窓口に働きかけ、書類を徐々に整えていく、そして銀行の信用をかちとり、次につなげていくことになる。
 
③ 将来像を明確にして融資戦略を組み立てていく
  いつまでたっても無くならない債務。こんな話にはうんざりだろう。しかし、いつかは無くさなければならない。あるいは、次の借金は新たな事業展開のために本当に勝負に出て、どうなるか楽しみになるような借金にしたいと誰もが思っているだろう。
  そのためには大きな構図を描くことも必要だ。大きな大目標を前に、向こう3年、10年などという企業の持続に向けた計画も役に立つのではないだろうか。ドラッカーは企業は社会に支持されるから存続すると言っている。逆に言えば、企業は持続するだけ社会に貢献する。借金があろうがなかろうが、持続させることが大切だ。
 
 貸し付けは将来の飛躍のために、銀行が御社にお金を預け、融資という形で投資しつづけるとも言える。債務が貯まっても投資を続けるというのであるから気前のいいことではないか。「投資」していただけるお客さんをおろそかにしてはいけない。「金は銀行にある。」。それを今の時代にどう活用するかが課題ということになる。
 
  「竜は春分にして天に昇り、秋分にして淵に潜む」、秋、色鮮やかな紅葉を写す淵にじっと潜む竜のようにひそみ、種を宿し、やがて春、花の頃に天に昇る。借金で耐える自らを淵に潜む竜だとたとえるのも悪くないだろう。時期と見るや天に昇るのだと言い聞かせるのもよいかと思う。