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№634 信用格付

№634 信用格付
 最近、改めて金融検査マニュアルの勉強に入っている。

 知り合いのある事業者は銀行担当者としつこく話し合って、自社の格付けを聞き出したのだそうだ。担当者は「ここだけの秘密ですからね。私が言ったということは絶対に黙っておいてくださいね。」と言っていたらしい。
 
 平成14年、金融再生プログラムを始め、我が国の金融政策は大きく変化した。不良債権処理を第一に貸しはがし貸し渋りが目についたのもこのころだ。代位弁済なども簡単に行われ、不良債権サービサーの手に渡っていった。去年まで借りれた賞与資金が突然貸せないなど言ってきたことも珍しくはなかった。
 
 貸し渋り貸しはがし不良債権処理によって生じたとされているが、金融検査マニュアルも理由になっているという考え方があるらしい。金融改革では評価の客観性や公平性が重視されるようになった。各銀行は一定の基準に従って事業者を格付けし、それに応じた融資を実行するという姿勢に変わった。その結果、それまでの貸付審査では貸し出していた融資も、格付けの結果、格落ちして貸せなくなったというのである。
 
 信用格付けは自己資本率など安全性分析、売上高経常利益率などの収益性分析、経常利益増加率などの成長性部席、債務償還年数などの返済能力などを定量的な分析が第一に行われる。続いて、営業力や技術力と言った定性的分析が行われ、最後には潜在的返済能力や他行の支援状況などが考慮されて決められていくようだ。
 
 正常先ならば標準金利は2%から3%、要注意先ならば5%と実に2%以上の開きがあるというから、格付けは企業に取って非常に重要な問題となる。もちろん、金融政策は民主党政権の登場によって大きく変わった。金融円滑化法ができて銀行など金融機関の対応は一変した。それまで、格付け中心だったのがとにもかくにも定性的要素を重視、条件変更にも応じ安くなったことは喜ばしいことだと思う。
 
 しかし、銀行の対応が柔軟になったからといって格付けは依然存在する。金融検査マニュアルの債務者区分も当然存在する。円滑化法のおかげで、リスケ、追加融資によって一時をしのいではいるが、それはあくまで一時的な生き残り手段でしかない。
 格付けの上昇を目指した根本的な債務対策が必要であることは忘れてはならない。