№629 インターネットと名誉毀損
インターネットは誰でも発信源になる画期的な媒体だ。メディアと言えば新聞、雑誌、テレビとマスコミに独占されていたが、今や、You-Tubeが日本の政治を動かすほどの力を持っている。
インターネットは誰でも発信源になる画期的な媒体だ。メディアと言えば新聞、雑誌、テレビとマスコミに独占されていたが、今や、You-Tubeが日本の政治を動かすほどの力を持っている。
名誉毀損は「事実を摘示」して、「公表」し、「他人の名誉を傷つける」ような場合を言う。公表とは不特定多数の者に情報を流通させる行為とされている。ウェブサイトが会員制である場合には特定多数となる。また、容易に転送できるなら、伝搬することを前提にしているから特定,少数でも不特定多数と考えられてしまい名誉毀損となる。
「事実の摘示」しなければ名誉毀損にならない。そのため、内容をあいまいにするということが行われることがある。「他人」といってもAさんとか○○さんとかにしてごまかすこともある。しかし、このような場合であっても文章全体からあのことだとか、あの人のことだとか、「事実」、「他人」が特定できると名誉毀損となりうる。なお、事実の摘示がなくても「あほ」とか「まぬけ」とか名誉感情を傷つける行為も文脈によっては不法行為となりうる。
最高裁は「当該部分の前後の文脈等の事情を総合的に考慮すると、当該部分の叙述を前提として前記事項を黙示的に主張するものと理解されるならば、同部分はやはり、事実を摘示するものとみるのが相当である。」としている(最三H.9.9.9判時1618号52頁)。
ところで、名誉毀損の場合の賠償額は小さい。私は500万円とか、1000万円とか高額な場合があってもいいと思うが裁判所は精神的苦痛という無形なものに賠償責任を認めることに消極的だ。