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№606 「中小製造業の中国進出はこうありたい。」(日刊工業新聞社)

№606 「中小製造業の中国進出はこうありたい。」(日刊工業新聞社

 私の事務所は中小企業家同友会のたまり場のようになっていて、最近はグローバリゼーションの議論がしきりだ。その中で、大阪ウェルディング工業社の評価をめぐって大いに議論が沸いた。
 
 前にも紹介したが、表題の本には大阪ウェルディング工業社の中国進出の様子がドキュメンタリー風に描かれている。昨今、企業の中国進出が当たり前になりつつある。中小企業が海外に進出する場合に何か特別なことがあるのだろうか。
 
 事務所に集まってくるある企業は最近タイ進出を決めた。顧客である中堅企業の海外生産の拡大に伴っての進出だ。この会社は発注先に自社のタイ進出を説明して了承を得た上で進出を決めている。とりあえず3億円を投資して工場を建設し、来年4月ころから稼働開始だ。
 
 多くの企業がこのパターンで進出を決めていることだろう。中小企業の海外進出はまさに社運をかけた戦いとなる。それにしても、こうした特別な事情無くして海外進出となるとかなり難しい・・・と思う。
 
 ところが、ウェルディング社は少し事情が違う。ウェルディング社が溶射技術を売りに中国進出を果たしている。最初は黄河流域に日本製のポンプが導入されるという情報を仕入れて、日本企業にアタックした。
 
 黄河の水は細かい砂が多く、ポンプの羽を溶射技術によって強化その結果、ウェルディング社は中国に進出すること、低価格で日本の品質を作り上げることを売り込んで、受注を果たした。
 
 私たちの議論の結論はこうだ。
 ウェルディング社は特別なことはしていない。お客さんである日本企業の動向をいち早く察知して、日本企業の求めている技術を果敢に提案する。中国進出とは言っても、自らの力量を超えない程度の規模で進出する。仕事を受注し、仕事が発展すればそれを基礎にさらに仕事を提案していく。
 
 それはかつて、高度経済成長期、日本の社長たちが伸びゆく市場の中でやってきたことではなかったか。グローバリゼーションが進み、私たちの市場は日本からアジア全体に広がった。アジアは急激に成長し、アジア進出の日系企業は高度な日本の技術を求めている。ファイトをもって、営業をしかけ、どんな図面を見せられてもこれに応え、新たな仕事を取っていく。先輩の社長がやってきたことを思い起こし、それをアジアでやろうというのが大阪ウェルディング工業の教訓だ。