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№588 妻の連帯保証

№588 妻の連帯保証
 弁護士にとって会社の自己破産はそんなに難しくない。私が弁護士になって初めて企業の自己破産の依頼を受けたとき、「もう立ち行きません、どうしたらいいでしょう。破産しようと思います。」と言われた。確かに財務状況は悪く、社員はやる気を失っていた。私はそうですか、ということで破産を申請し、破産手続は無事終わった。しかし、今から考えると、もう少し何かできなかったかと思う。
 
 この事件では家族も連帯保証人になっていて、巨額の負債を抱え込んでしまった。妻ばかりでなく、当時、20代だった娘が連帯保証人だった。こちらの方は破産しない方針にした。妻や娘はそもそも返せるはずがない。返済を当てにしていない悪質な保証に対しては返済に応じない、訴訟で決着をつけると強硬姿勢に出た。当時は若かったので、理屈はともかく正義はこちらだと思って対応した。結局、相手は裁判せず、交渉はだらだらと8年ぐらい続いた、そのうち、連帯保証人については10万円でいいから和解してほしいと言ってきた。しかし、0円でしか和解しないと突っぱね、その後、相手からは音沙汰がない。
 
 この対応は基本的に正しいと思う。最近でも類似の相談があった。
 
 こういう内容証明郵便はどうだろうか。この事例は信用金庫がサービサーに債権を譲渡した事例だ。このような理屈が通るかどうかはよく分からないが、失うものが何もなければかけてみる価値はある。
 
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冠省
 当職は愛知県弁護士会所属の弁護士ですが、●●氏を代理してご連絡します。
 本件については、貴殿より支払いの催促を受けております。本件については、●●氏は株式会社●●の連帯保証人であるところ、同社の経営には関与しておりませんでした。連帯保証契約締結当時、●●氏は代表取締役の妻であるという理由だけで連帯保証を負担したにすぎません。従って、本来同契約締結当時、事業に関与しない●●氏が連帯保証する必然性はありません。また、●●氏には契約締結時から債務負担能力がないことは明らかであり、●●信用金庫担当者もそのことを承知の上、連帯債務を負担させています。かような経過を鑑みれば、本件はそもそも連帯保証債務の履行を期待して契約書に署名させたのではなく、信用金庫内部の稟議を通過させることのみを目的とした仮装の契約であると考えます。本件連帯保証債務は虚偽表示により無効であり、仮にそうでないとしても、連帯保証債権の行使は権利の濫用に当たるものと存じます。ついては当方として支払いに応じかねる旨ご連絡します。
 本件については当職がすべての代理権を授権しました。今後、連絡などは当職までしていただきますようお願いいたします。