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№572  事業再生の法的処理

№572  事業再生の法的処理
 根雪のようにたまった債務については最後の最後には切り捨てる外はない。この場合、経営者としては断腸の思いであるが、「耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ」ほかはない。まだ、事業のうち、生き残り部分を残して後は切り捨ててしまうことになる。もちろん、信用は失うから、それでも生き残れるかがポイントだ。
 
1. 基本
  ダウンサイズしたり、切り離して生き残る事業を選択する。そして、生き残った事業を別の事業主体が経営する。これが基本だ。
  このような事業の移転は新会社の設立、事業譲渡、企業分割、民事再生、破産と使う手段は様々あるが、事業の移転という点では同じである。
  その場合、注意する点は、①等価性と②透明性だ。つまり、財産をごまかしたり、隠したりしないこと(透明性)、債権者が損をしないこと(等価性)が問題に対処する大原則となる。
 
2. 事業譲渡
  事業は人的物的組織の集合体だ。この集合体を事業という。事業の場合、組織を構成する財産的価値もあるが、事業体に対する社会的信用も「のれん」として価値あるものと考えられている。事業譲渡は対価が支払われれば、単純な売買契約である。但し、事業の譲渡主体が会社である場合には総会決議(会社法467条以下)であるとか、債務承継の問題(会社法24条以下)とか特別な規制がある。事業譲渡で一番の難しい問題は事業の経済的評価をどのように評価するかという点である。
 
3. 民事再生
  民事再生民事再生法に基づく手続きで、債務を大幅に切り下げ、返済計画を立てる。裁判所の承認を得られれば、返済計画に従った返済によって、残金が免責される。民事再生は債権者の同意を得ることが難しい場合が多い。手続きに多額の資金要する。信用も一気に低下してしまう。外にもいろいろ問題があり民事再生によって会社が生き残る例はそれほど多くない。むしろ、民事再生手続きの過程で事業譲渡を行い、譲渡された事業の生き残り手段として利用する場合が多い。本当に事業再生するという点では使い勝手が悪い。
 
4. 企業分割
  企業の特定の部門を独立させて事業を継続する方法である(会社法757条以下)。会社法に企業分割手続きが定められた。新設分割と吸収分割があるが、事業再生には新設分割を利用されることが多い。企業分割は新設会社などに債務は移転しない。債務は分割会社に残る。そのとき、新会社に債務を払って欲しいと思っても追求できない。その点では債権者保護手続きは不十分であり、反面、債務切り捨てがやりやすいとも言える。また、従前の許認可など引き継ぐという点では有利な場合があるが、許認可、免許の内容によって違うので十分調査しておく必要がある。
 
5. 破産
  破産は最後の最後の手段だ。変な話だが、生き残るために破産を選択する。つまり、事業譲渡などによって事業を移転させ、残った会社を破産させる。特に社長の破産が重要だ。会社、社長を破産させるのは債権者の追求を遮断し、社長の制約無く活動できるようにするためだ。