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№571 事業再生をどのように考えるか

№571  事業再生をどのように考えるか
 売上げが低下したりて立ち行かなくなったり、債務がどんどん膨らんでいって事業継続が困難になったら、事業をどうしたらいいだろうか。私たちの思考順序はこんな風だ。
 
1. 生き残る価値がある事業かどうか
  利益を生み出す企業は顧客の支持がある。どんなに債務を整理しても顧客の支持のない企業は存在する価値はない。そのため、私たちはこの企業はどこで利益を出しているか考える。
  これは傷んだ果実の判定に似ているかも知れない。全部が腐っているのか、食べられるところはあるのか、食べられるところだけでも切り離せば食べられるのか。こんなことを考える。
  全ての店舗が傷んでいるのか、そうでないのか。あるいは、運輸、建設、生産など部門ごとに考えて傷んでいるのか、切り離せるのか、そんなことも考える。
  事業再生は傷ついた樹木の再生に似ている。大きな枝を切り取っても芽が吹けばよしとするのである。あるいは、挿し木をして別に移して芽が吹けばよしとする。
 
2. キャッシュフローは大丈夫か
  生き残る芽があっても、当面のキャッシュフローが無ければ死んでしまう。まず、3ヶ月、6ヶ月程度のキャッシュフローを考えて資金ショートの可能性を考える。
  当面の支出を小さくするために不動産や生命保険、預貯金など処分できるものは処分してしまう。平行して、金融機関との交渉で1回の支払い分を小さくしてもらう。手形は本当にやっかいで、何とかジャンプや分割払いを頼み込む。
  さらに、支払えなければ支払うべき優先順位を考える。下請け、賃金、仕入れなど事業継続のためにどうしても必要なものから始まり、差し押さえの危険のある公租公課などを考えていく。
  こうした、優先順位をつけて支払うときには、何らかの形での企業分割などが頭に入っている。
  
3. 関係者の支持、支援はあるか
  親族などの支援はあるか。新規借入口などの何らかの支援はあるか考える。スポンサーの存在があるかどうかは事業再生の方向を決定的にする。
  また、債務を切り捨てたり、事業縮小に伴って信用を失うのであるが、それでも、支持してくれる顧客、下請け、仕入れ先などの存在を確認していく。
  あるいは、同業者の支援を得ることもある。同業者が工場を貸してくれたり、スポンサーになってくれたりすることもある。
  社員の支持も重要だ。場合によっては社員が後継者となり事業を引き継いでいくこともある。
 
4. こんなことを考えた上で、おおまか戦略を立てた上で、事業譲渡、企業分割、破産、民事再生など法的手段を選択していく。法的手段は技術的な問題でしかない。