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№565 進化について

№565 進化について
 進化を弱肉強食でとらえる考えは今はほとんどないんじゃないかと思う。

 むしろ、「環境に適応できる種だけが生き残ることができる。」という考えは定着しているのではないかという気がする。適応の過程で、様々な種が発展し、今日の多様性を作っていると言える。
 
 ライオンは強いが、お肉がなければ生きていけないため、常にお肉を生産する生態系に依存している。1Kgのレイヨウの肉が作り出されるためには、一定の面積と、太陽光と、植物と、土壌を改良維持するたくさんの生物が必要だろう。整った環境が必要な肉食獣は環境の変化に対する適応力がなく、最初に絶滅する。こういう話は弱肉強食では説明できない。
 
 ライチョウは高山地帯にいるが、地上では生きていけない。地上の鳥類の方が餌を採るのがうまいだろうし、捕食者から逃げる能力も高かろう。病気にだって地上の鳥類の方が強い。希少動物のライチョウは、しかし、弱いのではなく、高山地帯に適用できている点で強い。
 
 それにしても、不思議なのは、一つの森林に多様な樹木や生物がいることだ。先日、妻と長野県白骨温泉に出かけた。旅館からは深い谷に密生するたくさんの樹木が見えた。そこにはホウ、クヌギクルミ、カヤなどいろいろあった。カツラの巨木が時々あり、雨に濡れてそれはみごとだった。しかし、同一の環境下にあるのにどうして単一の植物だけにならなかったのだろうと思う。
 
 生物群集という言葉があって、一定地域の生物の総体を生物群集と呼ぶのだそうだ。生態学では生物群集の構造についていろいろな視点から調べている。「環境への適応」ということを考えたときに、生物相互の関係にうまく入り込めることも環境への適応の一つということになるのだろう。相互に競争関係にはあるのだが、共同関係にもないと種は残らない。このあたりは実に意味深なことではないだろうか。
 
 ところで、昔ながらの生物群集が発達し、多様な生態系を作っている光景は美しく、豊かだと感じる。白骨温泉の深い谷は本当に美しかった。それぞれの種が生き残りをかけて生存し、共同し、結果として全体が調和している姿は美しい。
 
 この調和のとれた生態系が持つ、美しさ、豊かさは企業の経済活動にもたとえられると思う。
 
 経済が活発で、競争があるが、単一の企業になることはない。競争の中で、環境適応への方策は多様に生み出され、創造され、それなりにニッチを獲得していく。経済全体が「美しい」、「生き生きしている」と感じられるのは、こうした企業の多様性が尊重され、開花している状態ではないかと思う。だから、私は経済を中小企業の視点から考えることが大切だと思うのだ。