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№558 社長が突然亡くなった。(その2)

№558 社長が突然亡くなった。(その2) 
 私の顧問先の社長が突然死した。依頼を受けて、私は会社経営の立て直しに関与している。本来の弁護士業務とは言い難いが、やってみるとだんだんと要領が分かってくる。前回は債務の整理について書いた。
 
 債務の整理と平行して取り組んだのは会計の「近代化」だ。もちろん顧問の税理士先生がいらっしゃったのだが、会社の会計処理は常に遅れていた。会社会計は当然パソコンなどでコントロールされなければならないのだが、この会社ではそうはなっていなかった。事業規模が小さいとはいえ、かなりの売上げがある会社なのだから、どうやってやっていたのだろうと思ってしまう。
 
 ともかく、会計は常に大幅に遅れ、期末にやっつけ仕事で処理していたというのが実情だった。もちろん、公共工事系が多いこともあり、請求はきっちりやっていた。下請けなどへの支払いも絶対に遅れないでやってきた。
 
 しかし、社長が亡くなった今、昔ながらの感で経営することは不可能だ。私に言わせれば、よく儲かる会社なのに長期負債が積み上がったのは、会計処理が「近代化」していなかったせいのような気がする。日頃からのコントロールができていないために、支払時期になるといつのまにか資金ショートし、それを借金で補うということを繰り返していた。その内に徐々に債務が根雪のようにたまっていったのだと思う。
 
 ともかく、会計用のパソコンを導入し、会計担当者を教育し、日々必ず記帳していく。毎月特定の日には月次の経営状態が分かるようにする。向こう半年ぐらいのキャッシュフローもできるだけ正確につかんでおく。預金、現金の残高は合っている。税理士さんに言わせればイロハのイであるが、できていなかったのだ。
 
 社長が亡くなって、私、奥さん、跡取りの社員、税理士さんと繰り返し会議を行い何とか会計を近代化させるよう努力してきた。長年、ルーズにしてきたことを突然に厳格にするのだから、これは大変なことだ。何しろ社長がいないものだから、どうなっているのかよく分からない。借金の整理よりもはるかにしんどい。
 
 しかし、みな努力し、最近になってようやく目途が経ってきた。9月が始期となるのだが、とりあえずは整理がつき、何とか10月には完全に会計を管理できるようにしたいと考えている。その上で、新社長には会計帳簿から経営分析できるようになってもらう予定だ。これは、税理士さんの役目になるだろう。しかし、これは会社の社風の問題もあるからそう簡単ではない。
 
 このように、この会社はやがて、借金は無くなり、会計も完璧になるだろう。

 次の課題は、経営指針の作成と、新社長(現社員)の社長としての責任感の養成となる。これも本来弁護士の役目とは言い難いところがあるが、やり始めてみるとだんだん分かってくる気がする。
 
 私のやろうとしていることは、要するに、教科書通り会社を作り直し、教科書通り会社を運営し、教科書通り営業を展開するということだ。