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№557 社長が突然亡くなった。(その1)

№557 社長が突然亡くなった。(その1) 
 私の顧問先に社長が突然死した会社がある。
 小さな会社なので社長がいなくなると、とたんに会社の機能は止まってしまう。とりあえず、奥さんが社長となって、社長の下で働いてた社員を中心に事業を維持することにした。
 
 弁護士は経営そのものの専門家ではないので本来こういう仕事には向いていない。しかし、弁護士という職業は不思議なもので、事件として取り組むとだんだん分かってくる。現在は顧問の税理士の先生とタッグを組んで徐々に整理が進んで、無借金経営のめどが立ち始めた。
 
 最初の段階で一番重要なのは関係者の動揺を抑えることだった。
 そのためすぐに後継者を決め、今後とも迷惑をかけないという宣言を行うことにした。ます、銀行、大口取引先に挨拶に行きとにもかくにも今後の展望を述べる。これは、正しいかどうかという問題よりも、どれだけまじめに決意しているかどうかを示すという視点で取り組んだ。
 
 続いて、下請けなど協力会社の社長を集めて、銀行、大口取引先がバックアップしていること、当面する事業には心配ないことを宣言し、さらに、関係顧客すべてに社長の遺志を継いで今後ちゃんとやっていきますという挨拶状を配布した。
 
 これで、極初期の動揺をまず抑えたと思う。今回で重要だったのは銀行や大口の取引先との連携が維持できたことだ。これは亡くなった社長の人徳によるところが大きい。
 
 社長が亡くなったとき、最大の問題は借金だった。
 債務処理の問題になると私の仕事の領域となる。まず、全ての債務を整理するとともに、債務がなければ企業は維持できるかどうか検討する。
 
 これは比較的簡単で、要するに経常利益がどうなっているかを月ごとに計算する。向こう6ヶ月程度の経常利益の動きをおおよそつかみ、資金ショートの危険を判断することになる。続いて財産の状態つかんで処理できる財産は全て処分する。銀行とも調整して、銀行の厳しい対応を回避する。
 
  この会社は事業自体は比較的よく、借金がなければかなりよい会社だと判断できた。しかし、社長が亡くなって、事業規模が小さくなると予想された。銀行の信用も落ちていることだろう。そのため、私たちの目標は、保険金の活用、財産の処分で借金を小さくし、できたら無借金に持っていくというところに置かれた。これは意外と手間取った。
 
 銀行に対しては会社の事業に関する全ての情報を開示して、会社の方針を正確に説明した。最初は企業存続に疑念を持っていた銀行も、徐々に理解し始め、銀行の担当者には随分協力してもらえるようになった。債務処理に向けたいろいろなプランを用意してくれ、なるほど銀行というのはこういうことを考えているのかと勉強になった。
 
 現状はほぼ無借金経営の目途がついている。あと、10ヶ月もすれば、会社から借金はなくなるだろう。いろいろ整理してできた貯金を利用すれば、売り上げの季節変動にも対応できると思う。
 
 そして、債務の整理と当時に、進めていったのは経理の健全化だった。(続く)