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№537 コンプライアンスと解雇

№537 コンプライアンスと解雇
 会社法の分野では一時コンプライアンスという言葉がやかましく議論された。

 牛肉の産地偽装事件、赤福が「まきなおし」として称して製造日付をごまかしていた事件など中小企業とはいえ、コンプライアンスの問題は非常に深刻だ。
 
 コンプライアンスは社内全体の順法精神をいかに系統だって維持するかが課題である。倫理規定をきちっと定め、それを管理する機関を定め、さらに社員教育を施していくことが求められている。
 
 コンプライアンスでは情報収集が非常に重視される。どんな立派な制度を設けても、社内規則や法令に違反する事実が見つからなければ意味がないからだ。例えば、三重県に大きな工場を持つ石原産業は、フェロシルトという廃棄物を不法投棄したために何百億円の損失を出した。これは三重工場の担当者が不法投棄に関する情報を握りつぶして重役会にあげなかったことも原因だとされている。
 
 ともかく、社内での「正義」というのを定め、社員が声を出せるようにすることが必要だ。これはスピークアップと言われるもので、ある会社はコンプライアンスに関する内規で「私たち一人ひとりが、声をあげるべきときにそうしなければ、会社としてインテグリティある行動へのコミットメントを果たしていくことはできません。・・・・次のような場合には報告義務があります。」と、スピークアップについて定めている。
 
 ある会社の事例であるが次の点でコンプライアンス違反を理由に解雇したが、裁判所はこれは正当と判断した(東京地裁H22. 2.26決定、判時158頁)。
① コンプライアンス調査について守秘義務があるにもかかわらず外部にもらしたこと。
② 部下に虚偽の報告をさせようとしたこと。
③ 他の社員との連絡禁止事項に違反して連絡をとったこと。
④ この社員が内規に違反する営業を行っていたこと。
 
 要するに、「ほう(報告)、れん(連絡)、そう(相談)」に違反したということですね。