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№534 租税債権は強い

№534 租税債権は強い
 経営が破綻し、再生や破産などを進めようと言うとき、気をつかうのが租税債権だ。事業税や住民税、固定資産税など、税金を滞納していることはめずらしくない。
 税金というのは太古から権力最大の効果だから、これをバカにしてはいけない。泣く子と地頭には勝てない。
 
 租税などの請求権は破産法では「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」を言う。

 租税債権は法律によって自力執行権が認められており、滞納処分によって強制的に徴収されてしまう。
 
例えば、経営破綻企業に売掛金が残っていると、税務署などはこれを狙ってくる。この対応は非常に早く、倒産の危険を察知するとだいたい1週間前後で差し押さえてくる。早いと3日ぐらいで差し押さえる。だから、事業再生を計画した場合には税務署などには極力秘密に動く必要がある。ちょっとでもにおわせてはダメだ。
 
 売掛金はよく狙われる。国税徴収法によれば、滞納処分によって差し押さえる場合、税務署は滞納額を超えて全額押さえることができる。200万円の滞納であっても、300万円の債権を差し押さえることができる。法律のしくみからいうと後で返せばよい。
 
 預金なども税務署の格好の標的だ。彼らには調査権というのがあって、銀行預金などはすぐに調べられる。あっという間に調べて、あっという間に差し押さえてくる。さすが税金だ。
 経営破綻企業の場合、残された財産を最大限使って、再生に向けて計画を立てるのだが、この税金のことを忘れたばかりにせっかく計画がおじゃんになることも珍しくない。
 
 最近相談受けた事例だが、この企業は民事再生による再生を計画していた。担当弁護士が租税による差し押さえを全く考慮していなかったために、あてにしていた売掛け金を税務署に押さえられ、再生に失敗した。
 
 決算報告書に取引先を記載して税務署に提出ているのだから、差し押さえは当たり前だ。税務署はこういう時のために、わざわざ取引を記載させてる。破産や再生の場合、租税債権に対する配慮は通常行うもので、本件ではそれに全く配慮がなかった。本件の場合は弁護過誤に近い。ちなみに、依頼者はこの弁護士に1200万円も支払っていた。最初から私のところに来れば良かったのに、と言っても後の祭りだ。